内容説明
アジアから問い直す―奴隷国家から移民国家へ。しかし、そこには「中国人問題」が存在した。南北戦争後の国家と社会の再編のなか、帝国的拡大と人種や性や労働の問題が交錯する“アメリカ人”の境界画定の動きを鋭く読み解き、アメリカ史像の核心をうつ。
目次
第1部 南北戦争・再建期の「中国人問題」―移民流入~一八八二年(移民と「苦力」―奴隷解放期のグローバル・ヒストリー;サンフランシスコの民衆世界と排華暴動;連邦政府の中国人移民政策―一八六八年バーリンゲイム条約から一八八二年排華移民法へ;“アメリカ人”の境界と中国人移民―風刺画のなかのネーション・セクシュアリティ・人種)
第2部 排華移民法成立以後の「中国人問題」―一八八二~一九〇六年(労働騎士団の結社の文化と「中国人問題」―一八八五年ロックスプリングズ暴動;世紀転換期の中国人移民政策の変容―“アメリカ人”の境界の帝国的再編)
結語 アメリカ合衆国における「中国人問題」の歴史的意義
著者等紹介
貴堂嘉之[キドウヨシユキ]
1966年東京に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。東京大学教養学部助手、千葉大学文学部史学科助教授を経て、一橋大学大学院社会学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
22
アメリカにおける中国人移民の歴史では、主にカリフォルニアの排華運動と1882年の排華法制定に焦点が当てられる。本書は当時のアメリカの「中国人問題」を単純な移民排斥の事案ではなく、グローバルな要因(奴隷国家から移民国家へ米西戦争後の帝国支配)、ナショナルな要因(南北戦争・再建期奴隷解放、共和党急進派の国民再定義、民主党の「白人の統治」、鉄道資本との労資対立)と、米中両国の外交・通商関係をリンクさせながら検証している。◇想像の共同体としての〈アメリカ的なるもの〉と移民国家の成り立ちへの視点が本書の肝か。2021/01/25