出版社内容情報
中国戦国時代を体系的・編年的に記す現存唯一の史料である『史記』。しかし、その記述には内容の矛盾や年代のズレをはじめとして、さまざまな問題が存在する。それは本当に錯誤や誤記なのか? 蘇秦・張儀・孟嘗君列伝を手掛りとして、その編纂手法と成立過程を探り、書き手と史料の相互交流を蘇らせる文献学的研究。
内容説明
『史記』の不可解な矛盾は、本当に錯誤や誤記なのか?蘇秦・張儀・孟嘗君三列伝を手がかりとして、『史記』における戦国史の編纂手法と戦国史像の成立過程を探る。
目次
序章 『史記』編纂過程・手法解明のための視座
第一章 蘇秦列伝の成立
第二章 孟嘗君列伝の構造
第三章 張儀列伝の編纂
第四章 『史記』と蘇代
終章 『史記』の描く戦国史の特徴
著者等紹介
斎藤賢[サイトウケン]
1992年大阪府生まれ。博士(文学)。京都大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科修士課程、博士後期課程修了(東洋史学専修)。現在、東京大学人文社会系研究科特任研究員(日本学術振興会特別研究員―PD)。2024年9月より北京大学歴史学系訪問学者(~2025年2月)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとうしん
10
蘇秦列伝、孟嘗君列伝、張儀列伝の分析を通して、蘇秦・張儀と合従連衡策が結びつけられたのが武帝期まで下ること、司馬遷の編纂意図に沿わない材料であってもなるべく保存しようとしたことなどを議論する。本書に言うように、戦国の「縦横家」の活躍が前漢時代のそれの投影であり、司馬遷自身が彼らと交流があったとすれば、『史記』の編纂を越えて彼らの活躍を前提とした戦国史、あるいは彼らの存在が意識されていなかった前漢史認識も問題になってくるのではないか。そういった文脈で今後の研究の可能性を提示した書と言えるだろう。2025/03/21
Go Extreme
1
戦国時代に関する記述 波瀾と変容の時代 史料の偏在 原資料の特性 司馬遷の史料選択と解釈 蘇秦の合従策 説話の展開・変容 司馬遷の取捨選択の意図 複数の異なった説話 張儀の連衡策 年代記述の誤りや矛盾点 秦を中心とした歴史叙述 多士を養った斉の宰相 孟嘗君の父である田嬰 食客との逸話 司馬遷の編纂意図 合従連衡のイメージ 戦国時代の政治ダイナミクス 後世に大きな影響を与える歴史叙述 司馬遷の歴史観や意図が反映された歴史物語 編年体・体系的な史料 紀年の錯誤や記述の矛盾 細部の描写や人物の評価における差異2025/04/15