内容説明
今日、「レジリエンス」は「SDGs」とともに、人新世の地球を救う鍵のように言われる。しかしそのいずれもが根本的な疑念を抱えている。すなわち誰のための何のためのレジリエンスであり持続可能な開発なのかということだ。外部からは脆弱でレジリエンス強化の対象と眼差され続けてきたアフリカ遊牧民の側から、揺らぐ生の脈絡に応じた日々のダイナミックな実践―すなわち動詞―こそがレジリエンスに他ならぬことを明らかにし、政策と実践の転換を促す画期的な国際共同研究。
目次
東アフリカ遊牧社会の脈絡からレジリエンスを再考する
第1部 レジリエンスの政治経済学(援助でアフリカはレジリエントになるか?―気候変動による災害が経済成長、農業、紛争に与える影響;開発・人道支援分野におけるレジリエンスの系譜学―可能性と問題点)
第2部 生業多様化とレジリエンス(レジリエンスと多様化の政治経済学―ケニア・バリンゴ県のイルチャムスの事例(一九八〇~二〇一八年)
東アフリカ牧畜社会における生業多様化とレジリエンス)
第3部 レジリエンスとアイデンティティ(移動するアイデンティティ―ケニア北部トゥルカナの牧畜民のレジリエンス、帰属、変化;土地法の改正とサンブル遊牧民女性のレジリエンス)
第4部 難民化した遊牧民のレジリエンス(関係性と脈絡から遊牧民のレジリエンスを考え直す―サンブル・ポコット間の紛争(二〇〇四/二〇〇九年)の事例研究
避難の物質文化―東アフリカ遊牧社会の国内遊難民に関する存在論的考察
セカンド・シティズンの幸福)
第5部 レジリエンスと移動性を比較する―農耕民・都市居住民・遊牧民((非)移動と忍耐力を通じたレジリエンス―バマコのケル・タマシェク
待機と賭け―タンザニアのインフォーマル経済のレジリエンスをめぐって
ザンビア農村部における元難民のレジリエンス
乾燥地におけるレジリエンス―意味をめぐる論争)
著者等紹介
湖中真哉[コナカシンヤ]
静岡県立大学国際関係学部教授。筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程単位取得退学。京都大学博士(地域研究)。専門は人類学・地域研究
センプリチェ,グレタ[センプリチェ,グレタ] [Semplici,Greta]
欧州大学院ロバート・シューマン高等研究センターPASTRES研究員。オックスフォード大学学院博士課程修了、PhD。専門は国際開発研究
リトル,ピーター D.[リトル,ピーター D.] [Little,Peter D.]
エモリー大学サミュエル・キャンドラー・ドブス記念教授、グローバル開発研究プログラム長。インディアナ大学大学院博士課程修了、PhD。専門は経済人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。