内容説明
わが国では、明治の文明開化以来、西洋文化の模倣、摂取にいそしんできたが、なぜか「弁論」だけは置き去りにされてきた。古代ギリシアより西洋文化の中枢にあった弁論をなぜ日本人は見落としたのか。本書はいわばその「忘れ物を拾いに行く」ために、古代アテナイの市民生活の中にあった民主政治と弁論家デモステネスの生の軌跡をたずね、時代の精神を代弁し、触れて感じることのできた弁論と、さらには現代においてなお生きるその遺産を紹介する。
目次
序章 弁論と民主政
第1章 弁論家の誕生
第2章 デモステネス初陣を飾る
第3章 アテナイ情勢
第4章 内憂外患
第5章 去就に迷う暇なし
第6章 ピロクラテスの講和
第7章 国内の敵・国外の敵
第8章 パックス・マケドニカ(マケドニアの平和)
第9章 晩節を汚す
終章 民主政のゆくえ
デモステネスの後裔たち
著者等紹介
木曽明子[キソアキコ]
大阪大学名誉教授。1936年満州生まれ。1967年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。大阪大学教授、北見工業大学教授を経て2002年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュンジュン
7
国政を担いたい者にとって、直接民主政を布くアテナイでは人を説得する術=弁論術が何よりも重要だった。前4世紀、成熟期に入った民主政アテナイで生まれたデモステネスは弁論家を立志する。実際に交わされた演説・論戦が現存していることにまず驚く。そして、生涯を復元できることにも。その事は逆説的に、西欧世界における「弁論」の重要度と彼が第一人者たる事の証左だと言える。2024/08/24
PETE
2
前著『弁論の世紀』と合わせて、デモステネスとアテナイの衰亡史に関する良質の入門書を構成している。というよりこれが遺著になっているので、この時代に興味を持ったら自分で他の弁論を当たれというメッセージか。ありがとうございました。2024/10/05