出版社内容情報
「客観的現実」には還元できない陰影のある現実は,世界をアフェクトゥス(情動)の相から眺めることによって初めて垣間見える。
内容説明
我々は「すでに在る」のではない。人も動植物もモノ…も、影響・作用され、影響・作用することの中で、存在し続けることが出来るのだ―。世界の見方の根本的な転倒によって現れる現実を示そうとする、人類学、哲学、生命科学そしてアートの共振。
目次
書き割りの身をうぐいす、無限小の幸福
第1部 アフェクトゥス論の射程(スピノザと「植物人類学」―アフェクトゥス概念の人類学的一展開;熱帯雨林との感受―共振とうなり ほか)
第2部 アフェクトゥスと潜在性―生・死・影(弔いとしての家―情動・モノ・死者;悪夢を感受し、「夢達」を甘受する―スーダン東南部における影の共同体 ほか)
第3部 アフェクトゥスと社会性―表層・リズム・パターン(皮膚的建築―情動の場としてのルーマニアのロマの家屋と音楽;境界、動作、リズム―ビャンス及び周辺地域の「太鼓演奏」の諸相 ほか)
第4部 アフェクトゥス論の発展(テクノロジーと情動―現代将棋における機械と人間;回想の表情/姿勢とその揺らぎ―供述聴取のテクノロジーをめぐって ほか)
アフェクトゥスとは何か?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポカホンタス
6
最近、文化人類学が魅力を失いつつあるように感じていたが、アフェクトゥスという概念につながることで一挙に魅力を取り戻したように見える。対象の地域や部族に何年もかけて溶け込んだ人だからこそ、その世界に満ちていてみんながそこに浸り込んでいる気配や雰囲気やモノが持つ細やかな情感などに直接アクセスして記述してしまえる強み。またそれは現代社会を新たな視点で捉えることでもある。大変面白く刺激的な論文が多かった。2021/01/14
むらさき
4
やっと読み終わったー。素読みですけど、文章の難しさがまばらで、読みにくいのは本当に読みにくかったです。 表紙の絵や序章を担当されている中村恭子さんの絵を美術館で見て、考えに興味をもったので本書を読んでみました。 本質的な議論をちゃんと追うには、本書内で参照されているスピノザやドゥルーズ、郡司さんの哲学を追う必要があるので、きっちりした理解は諦めました。 第5章の『悪夢を感受し、「夢達」を甘受する』が興味深くて面白かったです。2021/05/22