出版社内容情報
明治初期以来次々と誕生した『ハムレット』の翻案を検証し、日本と西洋の関係性、さらに異文化受容の本質の一端を浮かび上がらせる。
内容説明
明治期以降、西洋の文物が日本に流入するなかでシェイクスピア文学への関心も高まりをみせ、夏目漱石や志賀直哉など、代表的な近代作家たちが次々と悲劇『ハムレット』の翻案を執筆する。翻案とは、原作を新たな文脈にふさわしい形に書き直すことである。日本の文化にこの外国の「名作古典」がどのように浸透したのか、翻案作業の「現場」を浮かび上がらせ、日本と西洋との関係性、さらに異文化受容の本質の一端を明らかにする。
目次
第1部 近代作家と『ハムレット』(漱石の「股のぞき」;「あの狂言の攻撃をやらう」―志賀直哉「クローディアスの日記」の創作的批評;「妾にはどうしても言ひたい事がある」―小林秀雄「おふえりや遺文」における言葉と『ハムレット』批評)
第2部 第二次世界大戦と『ハムレット』翻案(太宰治の『新ハムレット』と大岡昇平の『ハムレット日記』;久生十蘭「ハムレット」―政治的アレゴリーを読み解く)
第3部 グローバル時代と東西文化の融合(仮名垣魯文と織田紘二の『葉武列土倭錦絵』をめぐって―“文化融合”の背後にあるもの;宗片邦義の『英語能ハムレット』―「生死はもはや問題ではない」;『ハムレット』受容史を書き換える―堤春恵と二十世紀末の日本)