出版社内容情報
丸橋 裕[マルハシ ユタカ]
内容説明
『法律』はプラトンの作品の中でもとりわけ研究されることが少なかった。この大部の著作にある法理論と倫理思想に綿密なる分析を加えることによって、プラトンの政治哲学における「法の支配」を、ソクラテス的な「対話の哲学」から読み解くという大胆な解釈を提示。今日の政治について考える上でも、重要な視座を提供する。プラトン晩年の大著を読み解くわが国初の本格的研究。
目次
プラトン対話篇『法律』をどう読むか
プラトンの政治哲学とソクラテスの精神
行為のアイティアーについて
哲学はなぜ現実に対して力をもちうるのか
「神の操り人形」の比喩
詩人追放の論理
「最も美しきドラーマ」
ディオニュソスのコロスの誕生
説得の技法としての対話術
魂の治癒教育
「夜の会議」と法の支配
対話篇『法律』における哲学の課題
著者等紹介
丸橋裕[マルハシユタカ]
兵庫県立大学看護学部教授。大阪府生まれ。埼玉大学教養学部教養学科ドイツ文学・言語コース卒業、京都大学大学院文学研究科博士課程哲学専攻(西洋哲学史)認定退学、京都大学博士(文学)。2006年より神戸大学、関西大学、関西学院大学などの非常勤講師を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ne_viderem
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めっぽう面白い。プラトンの対話篇でも最後期の作品「法律」を詳細に分析した本。これまでのプラトン研究史では、対話篇のなかでも「法律」は、文体の異様さだけでなく「国家」篇との内容的矛盾ゆえに、これまで偽作説すらでてくるほど不当に無視されてきた。田中美知太郎は「法律」からプラトン哲学を俯瞰しようとしたけど、それとは別ルートで、精緻な読解を通して決して「国家」篇と矛盾していないことを説く。「饗宴」との関係を探求する補論もスリリングでいい。これはもっと読まれるべき。ゲオルク・ピヒトも誰か邦訳してくれまいか。2018/07/03