内容説明
ある日突然、妻の首が回らなくなった。正確に言うと、首が左へ向いたまま元に戻らなくなったのだ。渾身の力で顔を前に向けることはできるが、そのためには手で左の頬を抑え続けねばならず、手を離すと顔は直ぐに左へ向いてしまう。初めは寝違いかと思っていたが、いつまでも治らず、近くの外科医院で揉んだり叩いたり温めたりと試したが、一向に良くならず、これが脊髄小脳変性症と診断されたのは、首が左へ向いたままになってから五年を経過した頃、総合病院の神経内科で受診してからのことである。私はそのときまで脊髄小脳変性症という病名を聞いたことがなかったし、私の周辺にもこの病気を知っている者はいなかった。脊髄小脳変性症の妻との20年間。
目次
首が曲がらない
乳癌
十八人中の四人は遺伝か
医師の急逝
脊髄小脳変性症
薬の副作用
身体障害者手帳
娘の高校卒業と大学入学
父の老化
退職〔ほか〕