内容説明
慶長19年(1614年)7月25日、徳川家康は、方広寺奉行でもあった片桐且元に、方広寺の鐘銘文の内容に問題ありとして、大仏殿上棟・供養の延期を命じた。「国家安康・君臣豊楽」の文字に隠れた呪詛を、家康は許さなかったのである。秀吉が亡くなる前に、秀頼を守り豊臣家の存続に命を賭けると約束をした且元は、決死の想いで家康との交渉に立ち向かう。だが、その交渉が淀君や大野治長からは且元の裏切りにしか見えないのであった。そして、ついに且元は豊臣から兵を挙げられる。しかし、同じ日、家康は大坂の陣の火蓋を切るのだった。この竹書房版では、且元始末を追記した。
著者等紹介
鈴木輝一郎[スズキキイチロウ]
1960年岐阜県生まれ。平成3年『情断!』でデビュー。平成6年『めんどうみてあげるね新宿職安前託老所』で第四七回日本推理作家協会賞受賞。歴史小説『本願寺顕如』『お市の方』エッセイ『何がなんでも作家になりたい!』など著書多数。主催する鈴木輝一郎小説講座は全国屈指のプロデビュー率を誇る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
3
読み始めてなんだと思ったら、小学館から出たハードカバーの「片桐且元」とほぼ同じ。でもまぁ、何年かぶりに輝一郎節を堪能。この作家って、馬鹿だけな人、腹黒いだけの人、卑怯だけの人を描く事は決してしませんね。常にそれぞれの登場人物の、欠点と長所、それなりの正義、それぞれの理想をきちっと語ってくれます。片桐且元という人物についてのやりきれない、しかし面白い歴史解釈と共に、あらゆる人の生に意味があったのだと示してくれました。いいなあ、こんなお話。2014/10/18
Gen Kato
3
最初は主役である片桐且元の心情に沿って読んでいるのだけれど、そのうち淀殿や秀頼の思いにも惹かれていく。且元も淀殿も、豊臣家を生かしたい心は同じ。ただ、その「生かし方」の考えが違ったのだ。どちらの気持ちもわかる、その葛藤と相克に、いつしか引きずり込まれている。単純な「悪役」は登場しない。すべてを見ている、忍びの五郎太の視線が効いています。五郎太…(泣)2014/08/03
じょるじ
2
の話をし真説と呼んで良いのかはわかりませんが、後半の急展開は面白かったです。且元と信雄の対比は笑えました。ただ、泥棒上がりの一人忍びに過ぎない五郎太が賢すぎるんじゃないでしょうか?最期は見事でした。2014/09/03
香月謙信
1
読めば読むほど、且元の報われなさが辛くなっていきました。戦国武将というのはこんなに孤独で自分の力しか恃むものがなかったのかと。でも、よく考えたら私たちのビジネスも、裏目が続くこともあれば思い通りに行かないことも多い。ラストは自分の有り様と比べながら読んでいました。2014/07/26