内容説明
フランスワインで育まれた、その土地らしさを示す概念「テロワール」。それは、人と土地をめぐるさまざまな人間の営みが作り出したものである。本書では、テロワールの歴史を辿りながら、シャトーでの現地調査やアジアの茶との比較を通じて、都市と文化のありかたを考える。
目次
序章 なぜテロワールなのか
第1部 テロワールとは何か(テロワール概念の成立と歴史;近世フランスにおける「テロワール」;近代フランスにおけるワイン法と都市ボルドー;近世トスカナにおける原産地呼称)
第2部 テロワールが息づくワイン生産の現場(サン=テミリオンとシャトーの歴史;サン=テミリオンのワイン醸造所の敷地環境;ボルドーのワイン醸造所の建築空間;ダヴィド=ボーリュー家文書をひもとく)
第3部 テロワール概念の可能性(シャンパーニュのテロワールと産地の形成;宇治茶産地における生産と加工;台湾茶のテロワール、その「外と内」;日本茶のテロワールと輸出)
終章 テロワールが語ること
著者等紹介
赤松加寿江[アカマツカズエ]
京都工芸繊維大学准教授、博士(美術)、西洋近世都市史
中川理[ナカガワオサム]
神戸女子大学客員教授、工学博士、近代都市史・建築史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
5
2023年5月刊。「テロワール」に関する学際的共同研究で、ワインを中心としてお茶についても論じられます。テロワールはワインを生み出す土地の意味で使われることが多いですが、本書では自然環境のみならず人間の関与の重要性に着目して論じられており、そのあたりの問題意識は序章の赤松論文で明快に整理されています。近世においてテロワールはむしろ否定的な文脈の言葉であったとする加藤論文・坂野論文の指摘も興味深い。分析は生産・加工・流通の局面が主体で、消費とりわけ飲酒・飲茶文化(様式)との関係も気になるところ。2023/06/05