出版社内容情報
社会、国家、世界を貫く確固とした社会科学的な視点、現代を相対化するスケールの大きな方法論で読み解く。
内容説明
階級、格差、福祉資本主義の危機―社会論、福祉国家論、グローバリゼーション論という3つの領域を、社会、国家、世界を貫く確固とした社会科学的な視点、現代を相対化するスケールの大きな方法論で考察する。
目次
第1部 階級社会と市民社会(格差の中の階級社会―福祉国家と階級;現代市民社会論の源流―高島善哉の「市民制社会」概念;階級論の復位―不平等・格差社会論を超えて)
第2部 福祉国家と現代日本(経済社会学は福祉国家をどのように論じるか―富永健一『社会変動の中の福祉国家―家族の失敗と国家の新しい機能』の批判;福祉資本主義の危機と家族主義の未来)
第3部 グローバリゼーションと帝国主義(グローバリゼーションへの対抗理論;世界の貧困、貧困の世界;市民社会の帝国主義―マルクスにおける概念の提起;市民社会論から帝国主義論へ)
著者等紹介
渡辺雅男[ワタナベマサオ]
1950年生まれ。1979年一橋大学社会学研究科博士課程単位取得。一橋大学社会学研究科教授、社会学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
6
本著は、第一部は階級社会と市民社会、第二部は福祉国家と現代日本、第三部はグローバリゼーションと帝国主義となっています。市民社会論は、高島善哉の「市民性社会」概念の意義とマルクスから捉えられる市民社会論とを噛み合わせながら、階級概念ともあわせて整理されて論じられています。ただ、僕にはまだ理解する上では勉強不足を痛感しました。また、格差が強調される中で階級概念の必要性は学ぶべき点がありました。帝国主義概念については、レーニンの概念をのりこえる必要性が述べられていますが、もう一度学び直す必要を感じました。2014/02/01
Mealla0v0
4
本書の基本的な視座は、近代社会を、平等原理に基づく市民社会と、資本主義の生み出す格差を是とする階級社会として見て、後者の現実を前者が理念的に統制することで進歩してきた、というもの(この理解は師・高島善哉に由来する)。福祉国家は、資本主義を前提としながらその修正を要求するものであり、一種の妥協物であった。本書にはいささか古臭い点もあるが、福祉国家的妥協が可能なのは高い経済成長が実現している間のみ、それを政治的に支える代表民主主義は労働者の封じ込め策であるのと同時に利害関係の党派性を惹起する代物、などと鋭利。2022/06/07