内容説明
小野十三郎にとって「大阪」は比喩であったか。否、それは生きるための論理であり、生理であった。昭和の激動を思念に刻んだ、その詩と詩論には、水ひたす葦原に展開する風景とうたの夢が映っている。日本列島をおおう重層の霧を払って覚醒の眼は光る。詩人の核心に鋭く迫る一貫の評論集。
目次
大阪のロゴスの母胎
風土よりの脱出願望
圧してくる風に逆らって
時の叫喚の中に静止するもの
音なく色なき海辺のうた
「葦の地方」とは何か
詩人の風貌―胸のふるえ
定住と放浪の美学
おれの前に立つな
重層の霧を晴らす―小野十三郎詩の立脚点