感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
159
寒い夜の読書は物語が沁み入っていく。浮かんでくる苦しみや悲しみの感情をそのまま言葉にすることができないほどの絶望感。はだしのゲンが生きていくために見つけた仕事で出会った政二さん。大切な家族と一緒にいられない、延々と続く精神的な孤独と深い痛み。微かな望みさえも届かないこの世界で、ゲンに託された現実を描きあげるという使命。夢も希望も失い、人の心は腐敗していく。そんな未来を誰も望んではいない。争いは誰ひとり救わない。困っている人を何とかしてでも助けたい、その気持ちに救われる、希望の光が届きそうな第3巻であった。2023/12/13
八百
22
第3巻は原爆症の恐ろしさと新しい家族の絆を描く。生活の為原爆の熱線で全身大火傷を負った青年の介護に雇われるゲンが見たものは地域そして家族からもバケモノ扱いされ死を請われる被爆者の悲惨な現状だった。ピカは移る…先の原発事故でも似たような風評が流れたが人々の憎悪や忌諱の対象が爆弾を落とした敵から被爆した味方にすり替わってしまうところが目に見えぬ毒の恐ろしさだろう。家族との再会、終戦、そして70年は草も生えぬと言われた土地にゲンの植えた麦が芽吹いた…新たな始まりの予兆2016/07/20
あむ
19
政二叔父さんに対して酷すぎる。中身は変わらないのに人間の皮が一枚剥けただけで、こんなに態度が変わるものなのか。2014/02/21
コウメ
13
人って自分が不幸になったらより不幸な人をいじめて自己満足するのか2019/03/20
れい
12
原爆の後遺症は、ケロイドなどの外表的なものにとどまらず内臓にもいたり心までも食い尽していく。人は訳が分からないものに対して恐怖を持ちやすいが「うつる」と当時は恐れられており、原爆被害を受けた人は理不尽な思いを味わい尽したことだろう。その中で強く生きていこうとする元の姿に救われる思いがする。この恐怖というものは、福島の事故でも見られたし、ハンセン病の例もある。人というものは、基本そのように出来ているのだと思う。苦しいが、一人で苦しむより同じ思いを共有できる人がいることは不幸中の幸いか。2015/05/09