感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
流言
42
大変興味深い内容であった。大久野島で行われたことを糾弾するだけでなく、どのような経緯で軍事施設が経つに至ったのか、現地周辺の住人は施設をどのように受け止めていて、どのような思いを持って働いていたのか。実際に作られた毒ガス兵器はどのような使われ方がなされたのか。歴史の暗部に対して様々な視点から述べることで、実際にその場で息づいていた兵器製造所としてのあり方が実感できる内容となっている。現在の大久野島にも一度行ってみたいと思った。あとがきで触れられている毒ガス資料館は、本書が描かれた二年後に開館されたようだ。2016/05/06
かいゆう
33
大久野島関連本4冊目。ページをめくってすぐ、イペリット障害の写真に驚いた。大久野島については日清戦争の頃まで遡り、この島に砲台が置かれたわけから、毒ガスを製造していくようになった流れ、戦後処理、生存者の苦しみまで詳細に書かれている。それだけでなく、化学兵器が第一次世界大戦で初登場してからの各国で使用されてきた歴史もある。この島で作られ実戦で使用された化学兵器について東京裁判では処分がなかったという。731部隊の石井四郎と同じようにデータと引き換えだったのだろうか。2019/02/09
おせきはん
26
今はうさぎの島として知られる広島県の大久野島には、かつて毒ガス工場があり、風船爆弾も作られていました。毒ガス工場があったのは知っていましたが、そこで働いていた方々が作業中の被害により毒ガスの後遺症で苦しんでいたことには、考えが及んでいませんでした。戦場ではなかったところにも戦争があったこと、忘れないようにします。2025/04/27
imagine
5
ネットで大久野島の毒ガス製造を知り、取り寄せ。読み物としては面白くないが、ページをめくる手が止まらない。劣悪な労働環境と健康被害の下で働く人たちが、現在の日本社会と相似形なのだ。製造現場で1000名以上が命を落とし、後遺症に多くの人が苦しむならば、いったい何のための兵器なのか。後になれば狂気の沙汰でも、そこから逃れられない庶民の無力さが虚しい。2018/08/29
むーこ
1
広島といえば原爆ドームというのが大きくだされているせいか、県民ですら大久野島にあった毒ガス工場のことを知らない人が多い。しかしそこで恐ろしいことが行われていたことも、そこで働いていた人がいたのも事実だ。今は海水浴場として賑わう島で何があったのか。県民にこそ読んでほしい本。2011/07/12