『新しいドイツの文学』シリーズ
幸せではないが、もういい

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  • サイズ B6判/ページ数 158p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784810202151
  • NDC分類 943
  • Cコード C0097

内容説明

51歳で自殺した母。事実を前に言葉は「闇の中へ失墜する」事実と言葉をめぐる闘いの記録。ハントケ初期の代表作。

著者等紹介

ハントケ,ペーター[ハントケ,ペーター][Handke,Peter]
1942年オーストリアのケルンテン州に、ドイツ人の父とスロベニア系の母とのあいだに生まれた。60年代、戦後西ドイツの文学を牽引してきた「グルッペ47」を批判、『観客罵倒』『カスパル』等の斬新で前衛的な作品で注目され、その後も、『ゴールキーパーの不安』『ゆるやかな帰郷』『反復』『疲れについての試論』『無人の入江の一年』等、つねに新たな表現を模索しながら長短編の小説、劇、詩、映画脚本等の多彩なジャンルにわたって、現在に至るまできわめて多作かつ実験的な手法で現代を描き、現代ドイツ語圏文学の最も重要な作家の一人となった。ヴェンダースの映画『ベルリン天使の詩』の脚本も書いている。90年代には、旧ユーゴについての発言、1999年のNATO空爆に対する抗議で激しい論議を巻き起こした。本書は、実際に起こった母の自殺と関わる自伝的要素の強い作品で、1972年に発表された初期の代表作の一つ

元吉瑞枝[モトヨシミズエ]
東京大学大学院修士課程修了。ドイツ文学者。熊本県立大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

138
作者は「ベルリン 天使の詩」の脚本家。本国では作家としても有名らしく、作風はアヴァンギャルドで攻撃的な印象を作者紹介から受けた。本作は、51歳の母が自殺した7週間後に書かれているからか、独特な雰囲気を持つ。彼なりに母への愛と、母を失った悲しみや喪失感を吐き出すための作業だったのだろう。過分に彼の独り善がりな見解にみえるところがあった。母の彼の父との思い出など、多分に美化されているように思える。それが彼の心の痛みをうつしているようで、殊更に切ない。2018/09/03

新地学@児童書病発動中

132
自ら命を絶った独の作家ハントケの母の生涯を描く小説。暗く、重たくて読んでいると胸の中に重苦しいものが広がる。自分の資質を生かすことなく、時代に翻弄され、夫と家族に振り回されるだけの一生を描く、ハントケの筆からは抑制された悲しみが伝わってきた。唯一の救いは読書によって自分のことを語ることができるようになったことだ。おそらくハントケの母のように生きた女性は数多く存在したのだろう。彼女たちの慟哭がこの物語を通して聞こえるような気がした。2015/11/14

青乃108号

130
日本語訳のタイトルが原題の微妙なニュアンスをどこまで表現出来ているのか疑問ではあるが、訳者もかなり悩み数多くの知見者とディスカッションした上で決めたものらしい。何とも言えず寂寥感漂う厭世的なタイトルであるが、俺はそこに惹かれた。51歳の若さで自殺した母親の「幸せではなかった」人生の追想録。思った程読みにくくはなかったが、時に難解な表現に突き当たる、多分こうかな、と解釈して読み進む。読みどころは自殺に突き進む母親のエキセントリックな振る舞いと、母親の自殺の報を受け著者ハントケが発した言葉。希死念慮が浮かぶ。2025/03/12

miyu

38
ハントケというと「ベルリン天使の詩」を思い出す。NATO空爆に敢然と反対して文学界から総スカンを受けながらも、態度を変えなかった孤高の人とも言える。翻訳者のタイトル付けがとても印象深い。しかしハントケ自身がまだ母親の自死を消化しきっておらず、自分の感情を整理するための書きつけにすぎないようにも思えた。親の自死を消化するなんて無理だ。だとしたら創作として書くしかないと思うのだが、あのハントケにはそれは無理なことだったのだろう。当時の東欧で女が生きるというのが、どれほどか困難だったかということだけは分かった。2015/03/07

KI

33
望んでいい世界になったから、夢をみてしまった。2019/12/11

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