内容説明
飢饉や戦乱の時代から、現代の「脳死臓器移植」に至るまで他者の血肉を欲する系譜を、膨大な文献や資料をもとに辿り、その生と死のぎりぎりの状況から、生き続ける意味を考える。
目次
第1部 飢餓の人肉食
第2部 戦乱の人肉食
第3部 淘汰の人肉食
第4部 抑圧の人肉食
第5部 煩悩の人肉食
第6部 慈愛の人肉食
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
23
食物が尽きた飢餓や、戦時や封鎖された極限状態、敵からの戦利や雪辱、呪術や怨念、変身願望、そして性的嗜好によって、古来よりヒトは、ヒトの肉を喰ってきた。古典や証言、公文書や文学作品を引き、各章ごとに分かれたテーマにまとめたはいいが、論というより主観の域を出ていない。後半の輸血や生体臓器移植も食人の代行為であり、脳死の解釈も医師ゆえの説得力もあったが、では刊行するなら、そこだけでいいのでは?と感じる。引いた戦中後の文献も、今や玉石混交感が否めない。 このジャンルに興味があるヒトなら、目を通す価値はあると思う。2015/08/09
P-man
2
いやー1997年に書かれた、すごい本でした。最初こそ顔をしかめながら読むんですが(日本陸軍の話が特に)、古今も洋の東西も問わず文化・神話・伝統・説話・昔話・宗教から、今に残る『人肉食』を通し、変遷する人間の社会と精神を綴ります。結構な大著なのですが、それでもおそらくもっと書こうと思えばいくらでも書けたところを頑張って削っているなというのがわかりました。著者は高名なお医者さんなので、最終章では現在と未来の医療を、形を変えた人肉食として、舌鋒鋭く現代医療の本質を抉ります。人間は人間を食っている。今も昔も。2021/04/17
よみびとしらず
1
新年一冊目の書き込みがこれ(笑)臓器移植を人肉食と捉え、掘り下げているのは新鮮だな、と思ったらどうやらお医者様が書いた本で、そっちが本題だったようだ。全体に人肉食に限らず、死について包括的な本、という印象。飢饉や戦争でやむにやまれず、あるいは趣味で、あるいは神と交信するために人は人を食う。おぞましい話は神話や伝説、ゴシップとなって人の口に上る。平時の社会では人を食った者は鬼とされ、村八分の憂き目に遭う。それでも生きたいと思うのは、人の本性なのか。……にしても読むの時ッ間かかった‼2017/01/02
うさ子
0
(読みかけ)