出版社内容情報
アラブの人たちの人生観や内的葛藤についてわれわれ日本人はあまりにも知らなすぎる。アラブ世界で初のノーベル文学賞を受賞したナギーブ・マハフーズは、作品の主人公を通してアラブ的心情を世界文学として開花させた。アラブ文学の第一人者が描く、普遍的人間像。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Sakie
16
エジプトのノーベル文学賞受賞作家による小説だという。初めて読むアラブの小説が、どんな未知の世界を見せてくれるのかと慎ましい気持ちで開いた。なのになんだこの主人公は。過干渉な母親にどっぷり庇護されて育ち、嫉妬不安恐怖羞恥、全ての感情と妄想から逃れることができない息子。自意識過剰にも程があるこの男、現代日本にも普通にいそうだが、男性優位とされるイスラム社会でこれはきついだろう。振り回された妻の死をうっちゃらかして他所の未亡人に鞍替えするに至っては痛罵しか出てこない。イスラム男性に持っていたイメージこそ蜃気楼。2019/10/13
てれまこし
7
『ミダック横丁』や「カイロ三部作」と同時期に書かれたものだが、悩める主人公の一人称語りになっていて、他の作品と雰囲気がかなりちがう。同じようなテーマは「カイロ三部作」のカマールでも扱われていたけど、カイロの民衆世界よりも悩める個人の主観的体験が前面に出てきてる。マフフーズという人は多作なだけでなく作品も多様だ。だから1940年代のエジプトという時代背景を抜きにして、誰でも近代的自我として経験する体験として読めるが、自分の主観世界に浸かりっきりなのに倦んで世間に目が行った人間には、ちょっとばかり物足りない。2024/03/27
kentake
0
この本が1948年にエジプトの作家によって書かれたという事実に驚く。2012/04/24
-
- 和書
- 零戦と戦艦大和 文春新書




