出版社内容情報
リビアの指導者カダフィ大佐の唯一の著作。政党も議会制民主主義も否定し、直接民主制による〈人民委員会〉を基礎にした独自の民族的社会主義を理論化。アラブ・ナショナリズムの支持を背景に激しい反米・反西欧路線を掲げたリビアという国を理解する原典。
内容説明
中東・イスラム世界のみならず、第三世界全域で強烈なインパクトと共に読まれ、浸透しつつある「第三の普遍理論」。資本主義でもマルクス主義でもない第三の世界観、新たな社会主義社会像を脱西欧思想のひとつのメルクマールとして提出した、カダフィ大佐が全生命を賭けて世界に問うた注目の書。
目次
第1部 民主主義問題の解決〈人民権力〉
第2部 経済問題の解決〈社会主義〉
第3部 第三の普遍理論の社会的基盤
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ドウ
4
かつてはリビアの憲法とさえ言われた、カダフィ大佐がその特殊思想を披瀝した書。議会制民主主義に対する深い猜疑心と痛烈な非難は読み応えがあり、こうした問題意識自体は極めて正当なものにも思われるが、提示される解決策は余りにも矛盾と単純さに満ちている。強い口調と大胆な論理(破綻していないとは言っていない)は、傍観者として読むぶんには面白いかもしれないが、被支配者として読むには恐ろしすぎる。2018/06/09
メルセ・ひすい
2
15-113 『緑の書』は、政治機構の問題の解決を提起するものである。それは、人民に独裁制の時代から真の民主主義の時代へと移行する道筋を示している。この新しい理論は、代表制や代議制の介在しない人民の権力を土台にしており、明快で実際的な直接民主主義を実現させるものである。従来の直接民主主義の理論が実際に適用することが困難で、かつ底辺の人民を組織化する努力を欠いていたために軽薄なものとなっていたのに対して、この新しい理論はそれとまったく異なる性質のものである。2012/01/19
Mt. G
0
「人民の代表というものはありえない。」「民主主義とは人民の権力のことであって、人民の代表が人民に代わって権力を行使することではない。」「もし、ある政党が選挙で勝利を収めた結果として、議会をおさえるならば、その議会はその政党のものであって、人民のものではない。」「政党は、現代の独裁制であり、近代の独裁的政治機構である。」「選挙で勝利を得た政党にとっては、議会とは、文字通りその政党のための議会であり、議会が附託する行政権力とは、その政党は人民を支配するための権力ということになるのである。」2016/07/11
s2013253
0
(A)狂犬と呼ばれていたが、文中からはそのような印象は抱けない。大きな権力を手にした人物の書く本ということで、非常に興味深かった。現在は入手が困難なのが残念な所。発行元にはもっと頑張って売り出してほしい。2014/07/27
Shun
0
リビア政変の頃から興味を持っていてやっと読了。社会主義的経済組織での生産に共同参加する者は皆熱意を持ち、賃金労働という一種の奴隷制とは異なるとする。民族は社会構造体であり、民主主義を統合の絆とするという。自由民主主義の国に生まれ育った為、民主主義とは何かについて選挙、基本的人権の尊重などといった漠然とした考えしか持ち合わせておらず、考えさせられた。自由民主主義は絶対善では無く、一種の手段でしか無いし、定義は地域や国ごとで変わってくるのではないだろうかと考えた。価値観の違いを肌で感じるようで興味深いものだ。2013/04/16