出版社内容情報
詩人・宮沢賢治は、その専門が地学であり、しかも、その学問を農民や生徒のために役立たせる努力をした真の地学者であった。本書は、賢治の地学者としての活動を丹念にたどるとともに、「イギリス海岸」などの文芸作品を、地学の立場から読み解いたユニークな賢治研究の書である。 ★★★朝日新聞(斎藤文一氏=イーハトーブ館前館長)評=賢治がすぐれた地質学者であることをあかしたもの。このような賢治像を初めて明らかにした画期的な書。★★★ ●●●本書「兄賢治とこの本……宮沢清六氏」より=今年の9月20日には賢治の42年忌の記念講演会が花巻農業高校で開かれた。その時に「地質学者としての宮沢賢治」という演題の講演を宮城さんにお願いしたが、専門的でむずかしい事柄もわかり易く話されて、生徒も深い感銘を受けたと言っていた。その講演もいろいろの資料といっしょに活字となって、ここに出版されることとなり、賢治の作品の中で語注だけでは何としてもよく解らなかった専門のことが、明快に解説されることは有難いことである。そして生前に賢治が説明しなかった科学や宗教や児童観など、また、やりかねた未完成のことなどを、これから研究したり出版したりする人たちに、この本はいろいろ示唆を与えることになるだろうし、大地を愛し、永遠につながる宇宙観を持たれる若い人たちの愛蔵本となると思う。●●● 【主要目次】▲▲第1章・「イギリス海岸」と北上平野=農民の地学者/イギリス海岸のおもいで/新第三紀の泥岩よ/北上川の流れ/白亜の海岸/地学は歴史科学/北上平野のおいたち/竜ノ口の海/イギリス海岸の地層/くるみの化石/地学界に貢献/獣の足跡/夢おおき地学者 ▲▲第2章・“農民の地学者”としての生活=砕石槌/郊外散歩/石英粗面岩/岩形の話/岩手山登山/石にうずまる部屋/青年ジエオロジストの道/ルートマップ/地学旅行/イリヂウム/ハーカーの岩石学/顕微鏡は自前で/土性調査/生きている土性図/山師はイヤ/“桑ッコ大学”の先生/地質断面図/生徒とともに学ぶ/なじょな石/「和風は河谷いっぱいに吹く」/羅須地人協会をたずねて/タンカル技師/折鶴の墓 第3章・“地学”からみた文芸作品=「種山ヶ原 パート3」の地学/「鎔岩流」のこと/「東岩手火山」をよむ/地学と宗教の世界「阿耨達池幻想曲」/「政治家」--地学者の風刺/「作品第一〇一三番」の魅力/「孤独と風童」--白いみかげの胃/地学者の旅「岩手輕便鐵道 七月(ジャズ)」/地学的な意見を詩で/“自然保護”の訴え/地学普及読物「気のいい火山弾」/「十力の金剛石」の鑑賞/火山の予知と利用のねがい「グスコーブドリの伝記」/地質巡検日誌「台川」/“地学”の“ソナタ”「楢ノ木大学士の野宿」/おわりに
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- 和書
- 森に帰らなかったカラス