出版社内容情報
国立がんセンター中央病院で数多くのガン患者と接し、幅広い臨床活動の一環としてガン患者の心理的側面に深い関心と責任をもって、積極的に取り組んでいる著者、書き下ろしの書。
ガンと闘い、ガンとともに生きる本人にとって、ほんとうに必要なことは何かを、余すところなく説いたロングセラー。
ガンと闘うために必要な知識と勇気を記した、ガン患者と家族のための心得帖。
【書評再録】
●朝日新聞「天声人語」(1993年2月6日)=人間の持つ強さを教えられた。
●信濃毎日新聞評(1992年11月15日)=意義のある死に方を迎えるための貴重な最後の時間を無にさせることがあってはならないと身にしみて感じさせる本である。
●月刊ナーシング評(1993年4月号)=ガン患者とその家族のケアのあり方についての実践的基盤となる本。多くの医師たちへ、ガンの高度先進医療における第一人者としても著名な著者の真摯な意見、治療者としての哲学が広く伝わっていくことを願いたい。また看護婦たちへは、ガン看護というものを、臨床の現場でなにができているのか、なにをすべきか、それこそ真摯に見つめ直していただきたい。そして患者さんとそのご家族には、自分自身の人生を限りあるからこそ大切に生きることの本当の意味を、ガンと闘うための正しい知識と勇気を得ていただきたい。
【内容紹介】本書「まえがき」より
年間21万人以上の人が、ガンで亡くなっています。この数字は、1年間にわが国で亡くなる方の4人に1人に当たります。実に交通事故死のおよそ19倍におよびます。一組の夫婦で考えますと、その両親を合わせて4人になりますが、そのうちの1人はガンで亡くなるということです。言い換えれば、人間の死のかたちとして最も普通のものが“ガン死”ということなのです。こうなっては逃げてばかりはおられません。いつみなさんのご家族がガンにかかるかもしれないのです。
ガンという病気の実態、ガンにかかることとはどういうことか、ガンになったらどうしたらよいのか、こうしたことを考えておくことは決してむだではないと思います。そのことが誰かがガンにかかったとき、ご家族そして本人をどれほど助けることになるかしれないからです。
「本人のショックを考えると、本当のことはとても言えない」というのが、ガン患者をもったときの家族の率直な気持ちだと思います。その結果、ガンと診断された時点から本人には正しい情報が伝わらず、医者や家族とは嘘の関係が進むことになるのです。自分のからだでありながら、なんのために、どんな治療が行われているのかわからない状態におかれるのです。そんなときから患者さんは、疑惑と不信のなかでしだいに孤独の世界に閉じこめられていくのです。嘘を通しての人間関係は、家族も医者も心を開いた対応が難しいのです。すべての問題の出発点は、診断がついた時点にあるのです。その時に真実を隠してしまうことが、その後の大きな問題に結びついてゆくのです。
私は医者になって17年目を迎えておりますが、最初の10年というものは、問題を正面視せずに逃げてばかりいたと思います。ガンの告知を日常的にするようになってから、診療は以前より大変になりました。今までよりも多くの配慮と時間が必要になりました。しかし、本当に心を開いて患者さんと付き合えるようになりました。その結果が、巻末のアンケート調査です。これにより、患者さん自身やご家族がどう受け止めておられるのかを直接確認することができたと同時に、気づかなかった多くのことを教えていただきました。
本書は、そのような背景から生まれました。ともかくこうした事実を知ったうえで、ご家庭の事情に応じたスタイルで、的確な判断で最前の道を歩むことにお役に立てば幸いです。
【主要目次】
▲▲第1章・いまに残る家族の悔悟
例1・「ありがとう」も言えないで……夫を亡くした妻
例2・言ってあげればよかった……義兄への思い
例3・なんのための友情か……ガンを患う友
医者としての私の体験……“告知”を考える契機
▲▲第2章・家族がガンと言われたとき
1.あなたならどうしますか(「患者には言わないで」……反対する家族/知らせたくない家族の心理/無視される本人の気持ち/自分がガンにかかったら)
2.ガンのもたらす不安と恐怖(なにが怖いのか/死との関わり/痛みの不安/わからないことの怖さ/問われる死生観)
3.医者の言い分(患者と家族を引き離す/疎遠になる患者/「治らない病気だから」という理屈/ガン医療における教育制度)
▲▲第3章・ガンとともに生きる……告知をめぐって
1.告知はどのようになされるか(いつ、どのように/患者と医者のきずな/告知が信頼を生む)
2.告知、その後(患者はどう受け止めるか/告知の意味を考える/大切なその後の支援/厚生省の「指針」とのちがい/告知後の人間関係)
3.さまざまな段階と経過(はじめの出会い/手術の前に/手術の後に/予後について)
4.一般病院と「がんセンター」
▲▲第4章・嘘がもたらす悲劇
嘘が嘘を呼ぶ仕組み
疑惑から不信へ
深まる心の溝
臨床試験と終末期医療
▲▲第5章・ガンの再認識
1.ガンの再認識(ガンはどんな病気か/ここまで進んだ鎮痛療法/ガン患者にとって辛いこと/治療と人生……ガンで死ぬということ)
2.告知をめぐる論議のなかで(争点はどこに/ケースバイケースとは/告知後の問題)
3.基本は患者の立場(患者の立場とは/インフォームドコンセントの中身/治療の選択と人生の選択)
4.こんな医療制度がほしい(精神的ケア/家族のケア)
▲▲第6章・家族に知っておいてほしいこと
1.“死”を考えるとき(日常のなかの“死”/死に方のイメージ/なんでも話し合える家族に)
2.患者の気持ちを知る(事前に相談しておくこと/家族の陥りやすい勘ちがい/患者の本当の希望とは/患者の立場に立って)
3.こんなときどうしたらよいか(本人に告知されない場合/治療の過程のなかで/終末期がおとずれたとき)
▲▲資料・「告知を受けた患者と家族」のアンケート調査
内容説明
病気が最初にわかったとき、本当のことを言うか言わないか。対応の誤りが、患者、家族、医者の精神的苦脳を倍加する。これだけは知ってほしいあなたのための心得帖。
目次
1 いまに残る家族の悔悟
2 家族がガンと言われたとき
3 ガンとともに生きる―告知をめぐって
4 嘘がもたらす悲劇
5 ガンの再認識
6 家族に知っておいてほしいこと
資料 「告知を受けた患者と家族」のアンケート調査