出版社内容情報
沖縄の農業に甚大な被害を与えてきた害虫ウリミバエを根絶するために、大量の殺虫剤を使い続けることなどできない……530億匹ものハエを飼育・不妊化し、野生のハエと交尾させることで、この害虫との20年戦争に農薬を使わずに勝利した、沖縄の人びとの粘り強い闘いと、新しい害虫駆除法へのメッセージ。 ★★★沖縄タイムス評(1994年9月27日)=世界に誇るべき偉業を、やさしい文体と地図、写真を用い、わかりやすく、興味深く読ませてくれる。未来にとっても大切なものを多く示唆している。多くの人々に読んでもらいたい一冊。★★★産経新聞評(1994年11月29日)=害虫ウリミバエの防除に立ち上がり、20年もの歳月をかけて根絶した人々の努力と苦闘を描いた感動的なドキュメント。時には分析的に、実証的に、またある時はスリリングにと、この話の展開は非常に面白く、恐らく読者は加速度的にこのドキュメントの世界に引き込まれることだろう。★★★東京新聞ほか評(1994年11月6日)=害虫ウリミバエ根絶に人知を傾けた、壮大なストーリー。スケールアップのズレや予期しない事故を、技術者たちの創意と情熱が乗り越えていくさまが淡々とつづられ、感動を誘う。★★★ ●●●「あとがき」より=いまでも那覇に行けば、だれでも巨大なウリミバエ工場を見ることができる。しかし、これがどのような経緯で建設されたのか、また現在のようにニガウリやマンゴーを、沖縄から自由に買って帰られるようになるまでのいきさつを知る人は、年々少なくなっている。その長い物語を、若い人たちになんとか残しておきたいというのが、私の年来の願いであった。また、環境保全と両立する害虫防除法として、不妊虫放飼法が実現するまでの道のりが、けっして平坦なものではなかったことも、多くの人に知ってもらいたかった。●●● 【主要目次】▲▲第1章・不妊虫放飼法の生い立ち=人食いバエの恐怖/カウボーイのいやがる仕事/ニップとブッシュの夢/ハエの去勢/原子力を平和のために/キュラソー島の実験/牛飼いたちの夢 ▲▲第2章・急速な北上---本土も危ない=ウリミバエの侵入/久米島の根絶計画/不妊虫放飼法成功の条件/ウリミバエの大量増殖/ウリミバエの不妊化 ▲▲第3章・不妊虫がたりない---久米島の実験=野生のハエをかぞえる/抑圧防除/久高島の実験/久米島放飼はじまる/400万匹放飼で根絶 ▲▲第4章・害虫を大量生産する=農薬にたよらない害虫防除法をもとめて/たいへんな根絶計画/メキシコへ/増殖施設の設計/不妊化施設の設計/ミバエ対策事業所の発足 ▲▲第5章・自然へどう放すか=山原の森でハエをかぞえる/抑圧防除が必要/不妊バエを裸で放す ▲▲第6章・家畜化したミバエ---交尾時間がちがう=昆虫の家畜化/ウリミバエの家畜化/増殖虫はどこがちがうか/新系統の導入/プロコピー氏来訪/増殖虫の交尾行動は変わっていない ▲▲第7章・ミバエ生産にもQCを導入=飛べないハエ/ミバエの品質管理/効果判定法の改良/ミカンコミバエの根絶 ▲▲第8章・動きだしたミバエ工場=新工場の稼働まで/ミバエ工場をたずねて/宮古島不妊虫放飼センター/トラップの不妊虫がふえない ▲▲第9章・立ちはだかる難関---宮古郡島根絶をめざして=冷却放飼法が悪い?/野生虫がふえてきた/ホットスポットをつぶせ/ミバエ工場では/最後のひと押しで根絶達成 ▲▲第10章・召し上がれ、沖縄の野菜を---根絶達成=沖縄群島根絶作戦/ミバエ輸送と放飼方法の改良/2億匹のやりくり/不妊虫抵抗性のハエ出現か?/沖縄群島根絶達成/台湾を目の前にして
内容説明
ある害虫をある地域から一匹残らず殺してしまうなどということが果してできるものなのだろうか。沖縄の農業に甚大な被害を与えてきた害虫ウリミバエを根絶するために、大量の殺虫剤を使いつづけることなどできない…。530億匹ものハエを飼育、不妊化し、野生のハエと交尾させることで、この害虫との20年戦争に、農薬を使わずに勝利した、沖縄のひとびとの粘り強い闘いと、新しい害虫防除法へのメッセージ。
目次
不妊虫放飼法の生い立ち
急速な北上―本土も危ない
不妊虫がたりない―久米島の実験
害虫を大量生産する
自然へどう放すか
家畜化したミバエ―交尾時間がちがう
ミバエ生産にもQCを導入
動きだしたミバエ工場
立ちはだかる難関―宮古群島根絶をめざして
召し上がれ、沖縄の野菜を―根絶達成