地獄蝶・極楽蝶

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 205p/高さ 20X14cm
  • 商品コード 9784806722229
  • NDC分類 486.8
  • Cコード C0039

出版社内容情報

「地獄蝶」「極楽蝶」と呼ばれる蝶とは、いったいどんな蝶なのか。
戦国時代、合戦場跡を群れ飛んだという幻の蝶の正体を、民間伝承、各種文献をもとに推理する。

【書評再録】
●日本経済新聞評(1992年7月19日)=蝶の生態を解き明かすのではなく、民俗や文化、歴史とのかかわりを書く。蝶マニアは少なくないが、こうした民俗学的な接近は珍しい。蝶にまつわるさまざまなエッセーを収録。疑問・不思議を追いかける。
●東京新聞・中日新聞評(1992年8月9日)=伝承の中の蝶、武士の精神構造と蝶、映画の中の蝶など、蝶の魅力を表現した内外の興味深い事例を、多方面にわたって収録している。

【内容紹介】本書「まえがき」より
 ある時ふと入手して読んだ「尾三気象俚諺」という、愛知県の天気予報についての民間伝承を集めた小冊子は、大変私の興味をひいた。「夕焼けは翌日晴れ」「猫が顔をなでると雨が近い」「蜂が低く巣を作るとその年は大風が吹く」など科学的に分析できるものから、どう考えても迷信としか思われないものまで、沢山の事例が分類整理してあり、昔の人たちが経験と勘を頼りに予測してきた歴史がうかがえて、思わず読みふけったものである。
 そんななかに「極楽蝶早朝より出づるは晴天」というものがあり、張りめぐらされた私のアンテナにひっかかった。極楽蝶とはききなれない名であるし、私がそれまでに調べたなかにも出てきていない。これはいったいどんな蝶であろうと、私は永い間疑問に思っていたが、偶然の機会から、岐阜県関ヶ原近くで明治の末期にカラスアゲハ、アゲハ、キアゲハなどの揚羽蝶全般をこのように呼んでいたことがわかった。
 そして一方、全国方言辞典には「ぢごくてふ」(地獄蝶。上総および下野鹿沼地方)の方言がある。これはひょっとしたら、表裏一体のものではないかと、私の直感が働き、それからこれら両者の関係について、資料収集と推理がはじまったのである。
 この書は、その過程と現在までの成果を中心として、前後に蝶にとらわれた何人かの人たちを描き、特に私の身近にあって、あたかも蝶に化身して冥界に去ったかのような先輩たちの鎮魂に意を注いだ。
 相変わらず終始一貫蝶のことばかりで、よくもまあこんなに蝶にまつわる話があるものだと思われる方が多いであろうが、私にとって、どんな見方であろうと、この本を手に取って、少しでも蝶に興味をもって下さる方が増えるならば、大変うれしいことである。

【主要目次】
▲▲第1章・魂を呼ぶ蝶---戦国のかなたへ
   1.伝承・俚諺のなかの蝶(尾三気象俚諺/昆虫に関する俚諺/「ごくらくてふ」との出会い)
   2.「ぢごくてふ」「ごくらくてふ」とはなにか(方言を手がかりに/ゆきついた戦国時代)
   3.「三河物語」を読む(武将たちの精神構造/「三河物語」の目的/大久保忠教の考える地獄)
   4.「地獄・極楽」の思想
   5.「関ヶ原」に舞う蝶
   6.ぢごくからごくらくへ
   7.伝承の系譜をみる
▲▲第2章・飛ぶ蝶があらわすもの
   1.蝶にまつわる遊戯「投扇興」(玩具・遊戯の起源/投扇興の誕生/遊び方の変遷とロンドンでの上演)
   2.映画のなかの蝶(ドキュメンタリー映画を見て/蝶の映画45本/こんな映画が見たい)
   3.蝶の刺青、そして手話(「八七分署」の蝶/手話の手の動きは蝶に似て)
   4.ナボコフの蝶の詩
   5.北欧の街で逢った蝶
▲▲第3章・蝶にとりつかれた人びと
   1.蝶を描いた絵師たち(英一蝶の見たもの/谷文晁と群蝶渡瀾図/蝶顛生・合葉文山の蝶)
   2.藤沢正平さんとギフチョウ(世界に一種類の切手/労作「ギフチョウとカンアオイ」/藤沢さんと私/ギフチョウ研究会と幻の会章)
   3.旧満州の蝶と採集者たち(植民地の蝶採集「表と裏」/戦火のなかで・佐竹新さん/アサギマダラと佐々木悌三さん/蝶がむすぶえにし)
   4.ポール・ジャクレーについて
▲▲第4章・今に残る蝶の謎
   1.蝶の数え方の不思議(蝶に「頭」なんて/数の表現いくつか/蝶採集は狩猟か/数え方のルーツ/「頭」を使った理由)
   2.農耕の習俗と蝶(雨乞い習俗の研究/蝶の出てくる雨乞い)
   3.蝶と「超」能力(蝶になった魂/諸外国の蝶観/霊魂を予知する力)

最近チェックした商品