内容説明
洋菓子の文化が花開く18、19世紀のパリとウィーン。お菓子の都で、洋菓子職人(パティシエ)たちは、今に伝わる洋菓子の傑作をどのように発明し、工夫し、世界中に広がる文化へ昇華させていったのか。クレープ、アップルパイ、ザッハトルテなど身近な洋菓子たちとともに、皇帝、国王、貴族、市民富裕層とパティシエとの関係から、イチゴのショートケーキの由来までを豊富なエピソードを交えてひもとく。
目次
第1部 文化史としての洋菓子の歴史
第2部 おしゃべりな洋菓子たち(ガトー・デ・ロワ;クレープ;アップルパイ;エクレール;ヴォローヴァン;ザッハトルテ;マドレーヌ;ブリオシュ;パンプキン・パイ;サヴァラン;ビッシュ・ド・ノエル;パン・デピス;タルト・タタン;ビスケット)
著者等紹介
長尾健二[ナガオケンジ]
1949年東京生まれ。(社)日本洋菓子協会連合会にて30年近くにわたって洋菓子専門月刊誌『ガトー(GATEAUX)』の編集に携わった後、退職してからはフランス料理を中心とする食文化史の探求に専念する。また、併せて洋菓子の由来と歴史に関する古今の資料収集にも力を注ぐ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
26
よくある洋菓子にまつわるトリビアを集めた本かと思ったら、まことしやかに語られているそのトリビア自体が正しいかどうかを検証するような内容で、とても面白かった。とにかく原典にあたることをモットーとする著者の姿勢はちょっと頑固おやじっぽいけれど、そのこだわりが下敷きになったアップルパイやマドレーヌ、ブリオシュにザッハトルテという有名菓子の解説は詳細でとても面白い。読み応えありました。2018/01/31
シルク
17
H・W・ビーチャーの『アップルパイ』て本からの引用が、す・て・き(*´Д`) 「それは、砂糖が砂糖の性質を放棄し、バターがバターであることをやめ、それぞれの香り豊かなスパイスが自ら進んでその性質を消滅させた上にできあがる栄光に満ちた統合物であり、それぞれの素材がその共通の死を通して『アップルパイ』という新しい生命へと昇華することなのである!/りんごはもはやりんごではない! それもやはり姿を変える。」(p.72)……むかし、母親の料理で、多分アップルパイが一番好きだった。もう二度と食べられない味だけど。2018/08/21
gtn
15
洋菓子と宗教との関わり、洋菓子それぞれの歴史を紹介する。まるで翻訳本のように詳細。小さく切るからショートケーキだと思っていたが違った。サクサクとした触感を英語でショートネスといい、そのケーキが日本に紹介されたが、同形のフワフワケーキの名称に転用したらしい。ともかく洋菓子に対する著者の愛情の深さに敬意を称する。2018/11/04
Hiroh
14
どこかで説明はされているものの覚えきれない大量のフランス語は前に読んだ『虚像のアラベスク』を連想する。菓子の起源は20世紀に誕生したものでもはっきりしなかったりする。失敗がきっかけ、という話も多い(タルトタタン)。なんにでもスパイスを使った時代があった。国をまたぎ影響しあって今の形になった菓子を語るこの本の初出が、韓国の雑誌だったのも面白い。「セルビアのブラチスラバ」はいただけない。校閲が入ってない?2018/06/12
猫
11
西洋菓子の由来や歴史を検証し紹介する本。よく語られる由来が以外にいい加減だったりする。そんな、伝説的な由来が生まれるくらいそのお菓子が愛されているということかもしれない。宗教と関係が深かったり、歴史の中で移り変わったりしながら、現在にまで生き残ったお菓子たちと受け継いでくれた職人さんに感謝。2019/02/02