出版社内容情報
人間としての豊かさ、輝きに満ちた笑顔……苛酷な労働、極限の生活を乗り越えてきたからこその言葉と顔がある。
「何でん来い。負けんとよ。」「くよくよ言うてどげしますか。アンタ! おもしろおかしゅういかな!」
46人の元炭坑婦のおばあちゃんたちが物語る自らの人生は、今のこの時代を生き抜く勇気を与えてくれるだろう。
【書評再録】
●朝日新聞「著者に会いたい」欄(2000年12月3日)=しわを刻んだ「美人」たちの表情がいい。
●西日本新聞評(2000年12月3日)=働く苦しさと喜び、悲惨とユーモアが、生き生きとした筑豊方言の語りに交錯する。今こうした世の中だからこそ「生きる」ことの意味をあらためて問いかける。
●中日新聞「私の3冊」(2000年12月24日)=彼女たちの写真を見ると、実にいい顔をしている。それに彼女たちが語る言葉も素晴らしく、読む者を元気にしてくれる。
●本の雑誌「2000年度 私のベスト3」黒田信一氏のベスト1(2001年1月号)=吸い込まれるように美しく、圧倒されるまでに堂々とした笑顔をみごとに切り取った写真を見るだけでも手に取る価値がある。
●読書人評(2000年11月17日)=本書は不思議に明るい。彼女たちが人生を肯定的に捉えているからだろう。読者もまた人間肯定の解放感とともにページを閉じるだろう。
【読者の声】
■女性(30歳)=写真一枚一枚、なでながら読んでいます。ほんとにみんな美しい。
■男性(75歳)=素晴らしい本です。元坑夫だったおばあさんたちの写真、お顔が後光をさす美しさに感動しました。後世に残したい本の1冊です。
■男性(46歳)=ここ10年くらい読んだ本の中で最も感銘を受けた。日本の近代化を引っぱったエネルギーを感じた。われわれもお婆ちゃんたちに負けていられないと強く思った。
■女性(28歳)=生の声が聴けて大変満足しました。2500円という値段の価値が充分あると思います。涙と自己反省なしには読むことができませんでした。このような本当の歴史をもっと若い世代が知っていくべきだと痛感しました。
■女性(61歳)=辛い人生も、明るく、強く、生きてこられた女性たちに強い感動を覚えました。
■女性(80歳)=本当の言葉が書いてあるのを感じた。素朴な人間の生き方に明日からの元気が出た。
■女性=すごい内容です。一人ひとりのおばあちゃんが、生き生きと語り部となり、炭坑の時代を今に伝えてくれます。写真もいい。時代を貫く光と闇。
■女性=祖父・父も炭坑の出です。自分の出身に改めて誇りが持てるような気がしております。ありがとうございました。
【内容紹介】本書「はじめに」より
この取材を通して日本の女性労働史を記録しようとしたわけではありません。また頻発する炭鉱災害の中、累々たる屍の山を築いてきた日本石炭産業のネガティブな部分を記録しようとしたのでもありません。人間が国家というシステムの中で生きていくうえで、その国家を基本的な部分で支えてきた産業と、その産業をもっとも底辺で支えた人間の基本的営為としての労働と、その労働を通して取り結ばれる素朴な人間関係の中から生まれる文化に、私は今のこの時代を生きる勇気を見つけだしたかっただけなのです。それがたまたま石炭産業であり、女性であったにすぎなかったのです。
「炭坑というところは仕事が終われば、前だか後ろだかわからんごとみんな真っ黒になって上がってくるとです。誰が誰だか、自分の父ちゃんさえどこにいるのか全くわからん。それでもそんな姿を見て一度だって汚いと思うたことはないとです」
母娘3代にわたって坑夫を夫に持ったという一人の女性が語ったこの言葉を、私は今でも忘れれることができません。私が筑豊に滞在していた時期は、時あたかもバブル経済の絶頂期でした。このころ巷では3Kなる言葉が流行語になっていました。「危険で汚くてきつい」職場は敬遠され、「安全できれいで楽な」職場へと日本人の就労意識は大きく変わりました。3K職場は人手不足から労務倒産の危機に陥り、それを救ったのは外国人労働者でした。朝シャンに代表される異常なまでもの清潔主義と、メディアを通して垂れ流されるおびただしい数の抗菌、抗臭グッズの氾濫は、3K職場が敬遠される時代の精神と無縁のところで成り立っているものではないでしょう。
しかし、ちょっと待ってください。少し冷静になって考えてみれば、私たちが今日の糧を得て明日という日を不安なく迎えることができるのも、生きていくために必要な社会的生産が行われているからにほかなりません。そしてそういった生産は、「危険で汚くてきつい」労働によって初めて可能となるのではないでしょうか。安全できれい、無菌・無臭といった、実験室に置いてあるシャーレの中に真綿を敷き詰めたような、居心地のいい環境の中だけで私たちの暮らしが成り立つものではないはずです。
また、そういった「危険で汚くてきつい」労働というものは、果たしてそれほど敬遠されるようなものなのでしょうか。確かに労働が搾取を前提とする生産関係の中にあるとき、苦痛を伴うものであることは否定できない事実かもしれません。しかし、労働というものが本来持っているものは、そのすべてを苦役とするような、そんな貧しいものでは決してないはずです。
私は元女坑夫のお婆ちゃんたちとの「お付き合い」を通して、一日の大半を苛酷な労働に追われ、新聞やTVとも無縁なその時代に生きた彼女たちの人間としての豊かさに圧倒されつづけました。そこには活字や映像を通して知り得る情報はなくとも想像力がありました。言葉で語られる世界はなくとも生きた哲学がありました。机の上の知識はなくとも、絶望と困難を乗り越えて行く知恵と行動力、そして何よりも働く仲間同士が作り上げた相互の信頼がありました。
科学技術の進歩は私たちの生活をこの上なく便利なものにしましたが、ひとつひとつモノを獲得していくということは、同時に人間が持っている可能性をひとつひとつ失っていくことでもあるのだということに私は初めて気づかされたのでした。
内容説明
「くよくよ言うてどげしますか。アンタ!おもしろおかしゅういかな!」苛酷な労働、極限の生活―だけど、底ぬけに明るくたくましい。46人の元炭坑婦のおばあちゃんたちが、がむしゃらに生きてきた自らの人生を物語る。
目次
能美シズコ
原田ツマ
西嶋ヒサエ
久保ウメノ
秋山サカエ
井手コズエ
永山アヤコ
広畑フミコ
大津ミツ
佐野トシノ〔ほか〕
感想・レビュー
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