感想・レビュー
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夜間飛行
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『水葬物語』全講義。《かたむきし記憶の窓と彈痕のある薔薇館、つひに點燈(とも)らぬ》…薔薇館の傾いた窓からは世間の見ているような真っ直ぐな景色は見えない。弾痕から考えてそれは戦争の景色か。ではなぜ復興して灯を点さないのだろう。著者によれば薔薇は日の丸を連想させ、エロスや憎しみの象徴である。「點燈らぬ」館は死の闇に閉ざされているが、一方で薔薇とは闇の底から噴出する血であり、生命そのものにも思える。生命は闇からしか生まれず、平和は復讐を内に秘めている。血の薔薇が赤く点っている限り、明るすぎる灯は点らないのだ。2014/10/26