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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二升石
1
人の世の平凡な在郷たるアールの谷。そして、そこから黄昏の境によって隔てられた、あまりにも魅惑的な魔境たるエルフランド。そのありようを、全編にわたって見事に、詩的に紡ぎ続けたファンタジー小説。物語、人物、設定などにももちろん魅力は必要だけれど、ファンタジーとは本来、出来事の「印象の内に潜む何等か」をどれだけ色濃く表現できるか? をもち成り立ったもの。この作品は、過ぎ去る"その瞬間"の繊細な描写の積み重ねをもって、永遠の中にいつまでも揺蕩う世界と、そこに満ちる印象の尽くを描くことに成功していた。ただただ溜息。2020/07/05