内容説明
本書は、十九世紀ロシア正教会の司祭が自ら筆をとり、当時の農村における聖職者の貧窮、家庭生活の不幸、精神的堕落、神学校や教会内部での賄賂のやりとり、聖職売買、聖職者や農民らの飲酒の習慣、高位聖職者たちの飽くなき権力欲と物欲、神学校の実態などを生々しく描きだしたきわめて珍しい記録である。
目次
初等神学校
中等神学校
農村司祭
農村司祭の社会関係
農村司祭の説教
褒賞
むすび
補足
訳者解説「近代ロシアの国家と教会」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フロム
5
農村で勤務する司祭の陳情書。司祭用の幼年学校は刑務所と言うより強制収容所や地獄に近く、彼らの住む下宿先は屋根と壁があるだけで飯は酷いスープと酷いパンが出るだけ、司祭になっても徒労に忙殺され、教会組織は賄賂が横行し、放埒を極めた地主から農民、職人至るまでウォッカと言うガソリンが無いと全てが機能しない世界。司祭に敬意なんて払わない。ロシア人はロシアという鍋の中の具、煮ようが冷まそうが鍋の中で生き抜くしか無い。そんな余りにもロシアな世界で驚愕。ロシア文学は独特さはこのような世界から醸成されるのがよく分かる一冊 2024/09/02
ヨセフ
0
帝政期のロシア正教会がその絢爛な外観に反して血生臭い暴力装置、異教徒折伏の尖兵の役割を担っていた歴史は宗務院やタタール民族運動に関する諸々の研究書に詳しいが、本書の様に権力と一体化した教会組織の内部でさえも貧困と精神的頽廃が猖獗を極めていた事実を一聖職者の日常的視座から記したものは意外と少ないらしい。そういう意味で非情に面白い本であったと思う。2014/08/17