出版社内容情報
野生動物の死体は、法的には「生ごみ」である。しかし大量死には感染症や中毒死の可能性が示唆され、死にざまによっては動物虐待が疑われる。近年、人獣共通感染症をはじめ、動物が関係する案件が増加しており、死因を解明することの重要性も増している。様々な動物で「剖検」の記録を積み重ねてきた著者は、獣医学においても、人間社会の法医学に相当する分野が必要だと主張する。
内容説明
大量死、中毒死、虐待が疑われる不審死…法獣医学で死因解明に挑む!
目次
第1章 なぜ牛大学に野鳥が来る?
第2章 どのような死があるのだろう?
第3章 身近な鳥類の大量死はなぜ起こる?
第4章 人間活動が不運な死をもたらす
第5章 哺乳類と爬虫類の剖検は命がけ
第6章 野生動物の法獣医学とは?
著者等紹介
浅川満彦[アサカワミツヒコ]
1959年、山梨県韮崎市生まれ。1985年、酪農学園大学大学院獣医学研究科修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マリリン
47
文体は好みでないが、興味ある分野なので面白かった。獣医毒性学の大切さを感じる。金属・農薬・医薬品・環境汚染物資・生物毒他にも食品添加物や産業廃棄物・化学薬品等の影響は人間のみならず動物にも影響を及ぼす。自給率が少ないのは食品だけではなく、粗飼料も。丁寧に作られた日本の食品は海外に流出。安価を求める代償は、自給自足率の低下を招だけでなく弊害は国産品にも及ぶ。イワツバメの汚泥処理場で大量死等、動物の死の実態は知らなかった事も多く、野生動物の世界で起きている事は人間の世界でも起きるという言葉を思い出した。2022/08/11
瑪瑙(サードニックス)
35
やっと読み終わりました。私にとっては難しい言葉が多くて読むのに時間がかかりました。著者は本来は寄生虫の専門家のようですが、北海道にWAMC(野性動物医学センター)が設置されてその運用を任されて様々な動物たちの怪我や死と関わることになった。なぜ死んだのか?人間ならば法医学があるように、動物にも法獣医学が必要だと説く。なるほどなと思う。動物の死はウイルスが関連している場合もあるし、人間の営みのせいで引き起こされることもあると知った。法獣医学が確立される事を願う。2023/04/14
まるぷー
20
鳥類の大量死がウイルス性なのか、海鳥の死体は重油や環境悪化による人為的な要因なのか法獣医学者の著者が興味深い観点で書かれている。野生動物の寄生虫やその宿主になり媒体として他の動物ばかりでなく人的にも感染の恐ろしさもある。鹿や猪、狸などクルマに轢かれて路上での死体を見かけることがあるが、迂闊に触れてはいけない。(触れないけど)また、野生動物の保護と愛護動物に関する法律にも触れられている。専門的用語や法規など難しい事項もあったが、事例は分かりやすく書かれていた。2022/02/05
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
16
望外に野生動物不審死の第一人者となった著者、おまけに漫画家の娘さんはそれをネタにヒット作を描く。天寿を全うしたと確認できない死はすべからく検死が必要な不審死となるようで、それは人間だけでなく動物も同じ。動物の不審死は人為的であることが多く、死因をはっきりさせる事は動物のためというより人間の安全のためであるところが多いようなのは致し方なし。しかし「動物を守れ!」と声高な綺麗事に走るのではなく、謎解きの興味深さに重きが置かれているようだったのは良し悪しかなあ。2022/05/29
ふたば
10
時々、鳥の大量死などがニュースになることがある。その場合の死因の究明等は保健所がやっているのだろうと、漠然とだが考えていた。獣医師の役割にはこういうものも含まれていたのだと、いまさらながら知ることになった。ペットに関しては、多くの情報があって、医師たちの役割も知られて来ているが、こういう活動についてはあまり知られていなかったことが、今となっては不思議でならない。野生とはいえ、彼らはヒトの身近に生きているもの。であるなら、その死はヒトにも直接的、間接的にかかわっている。無関心でいてはならないな。2022/04/26