内容説明
代替医療は存在しない、効く治療と効かない治療があるだけだ―代替医療大国アメリカにおいて、いかに代替医療が社会に受け入れられるようになり、それによって人々の健康が脅かされてきたか。小児科医であり、ロタウィルスワクチンの開発者でもある著者が、政治、メディア、産業が一体となった社会問題として描き出す。
目次
少年を救え
第1部 現代医療への不信
第2部 ナチュラルなものの魅力
第3部 小さなサプリメーカー対巨大製薬会社
第4部 代替医療にスターは輝く
第5部 希望ビジネス
第6部 カリスマ治療師には抵抗しがたい
第7部 代替医療に実際に効くものがあるのはなぜか?
著者等紹介
オフィット,ポール[オフィット,ポール] [Offit,Paul A.]
医師、医学博士。フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センター長。研究者としてはロタウィルスワクチンの開発者の一人としても知られる
ナカイサヤカ[ナカイサヤカ]
翻訳家、ライター。ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)運営委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Miyoshi Hirotaka
26
酒は百薬の長、病は気からという医療の経験則を暗喩する表現が文化に残る。理容店の三色看板は、床屋が外科と歯科を兼ね、瀉血をしていた頃の名残。医療がエビデンス主義へ移行したのは18世紀半の英国軍艦が起源。科学の脆弱性が克服され、寿命が延びた一方で、ニセ科学も蔓延った。治りたい、治したいという心の隙間に入り込み、治療師がカリスマ化したり、単にビジネス化したりした例もある。一方、代替医療の中にも効く治療はある。健康に関する判断は最高の責任を伴う。「何よりも害をなすことなかれ」という医療の原則を守ることが最も大事。2021/08/14
くさてる
16
日常生活で出会うサプリメントや健康食品、祈りや健康法。標準的な病院での治療やワクチン、手術という手段よりに比べて、より「自然」で「健康に良さそう」に思えるそれらの代替療法の正体と、それらをもてはやす人間の心理、それにすがらずにいられない人々の弱みに付け込む人々の存在について、具体例も多く、分かりやすい解説が読める一冊です。自分自身はもちろん家族や大事な人を病が襲ったとき、藁にもすがりたくなり迷いそうになる心を、誰かに利用されないためにも、目を通しておいて良かった内容でした。2015/12/02
mawaji
11
医師・ジャーナリストである村中璃子氏のツイートを見て手に取りました。本書の原題はLovin’ Spoonfulのハッピーな楽曲を思い浮かべますが、読み進むうちにどんどん暗澹たる気分になってきてしまいます。子宮頸がんワクチンの副作用問題で接種を支持する記事を書いた記者が個人攻撃を受けたり、捏造したデータを出した研究班が何の謝罪もしない我が国の現状と重ね合わせながら読みました。「何かが自然だからといって、それは安全であることは意味しない」「そして何かが自然ではないからというだけで、それが悪いということもない」2017/07/14
そら
9
読み始めた。冒頭の「標準医療による治療には失望させられることもあるが、だからといって代替医療がノーチェックで良い訳ではないということだ。どんな療法でも同じように厳しい立証基準が課せられなくてはならない。そうしないと科学的に検証されていない話を信じるように求める治療者に騙され続けることになってしまう。それは私たちが一番心が弱って、治るというなら何だって言われるままにお金を払おうと思ってしまうときに起こる」という文章にすべてが集約されていると思う。2015/11/23
tsuneki526
8
代替医療は存在しない、効く治療と効かない治療があるだけだ。本書の内容はこれに尽きる。だから効くのであればプラセボも解説されるのだ。いわゆる標準医療がどのような手順を経て標準医療となるのか、そして代替医療がなぜ標準医療となれないかを解説することで世間に流布している健康法だのサプリだのの問題点を解説している。そして、今日の代替医療の隆盛は途上国の医療事情を知らず、机上の空論で人の命をもてあそぶ都会人の傲慢さによって支えられているのだということがわかる。2017/06/29