内容説明
東アジアの地域秩序構築をめぐり対立を深める日本と米国。中国大陸における「特殊権益」を追求する陸軍や、日本の目論見に反対し「門戸開放」を主張する欧米列強といったプレーヤーの狭間で、外務省は如何なる外交戦略を展開したのか。有田八郎、重光葵、佐藤尚武らを中心に、アジア派、欧米派、革新派と呼ばれた外交官たちの挑戦と苦悩の足跡をたどる。
目次
序章 一九三〇年代の日本外交のなかの外務省
第1章 東アジア秩序構想の諸相
第2章 九カ国条約への挑戦と日米関係
第3章 日中戦争前夜の日本外交
第4章 制限的門戸開放主義と日米関係
第5章 佐藤尚武の現状打破構想
第6章 対中外交・対米外交のなかの対英外交
終章 一九三〇年代の外務省と東アジア新秩序構想
著者等紹介
湯川勇人[ユカワハヤト]
広島大学大学院社会科学研究科准教授。1988年生まれ。甲南大学卒業、神戸大学大学院法学研究科博士後期課程修了。アイオワ大学客員研究員、ひょうご震災記念21世紀研究機構研究戦略センター研究調査部主任研究員などを経て2019年より現職。2017年、論文「東アジア秩序をめぐる日米関係:1930年代の外務省による東亜新秩序の模索」で第一六回アジア太平洋研究賞佳作を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
19
1930年代の外務省が東アジア新秩序構想の建設と対米関係の維持という相容れない目標をいかに両立させようと奮闘したか。有田八郎と佐藤尚武という二人の外相に焦点を当て、ワシントン体制の打破、原料資源問題ヘの取組、英米との向き合い方などを分析する。特に有田による「東亜新秩序声明」は、九カ国条約を完全には否定せず制限的門戸開放を適用させようとしていた点を明らかにしたのは本書の肝であろうか。◇世論との対峙の難しさなど、外交とはそもそもなんぞやと考えさせられる。◆本書は大平正芳記念賞受賞。2023/03/22
バルジ
3
1930年代の日本外交における「アジア派」殊に有田八郎と「欧米派」佐藤尚武の言説を中心に当該期の日本外交が「現状変更」という方向性でいかにその方針が収斂され行き詰まっていくかを論ずる。特に第1章でのアジア派、欧米派、革新派の対外構想を整理した部分は本書の前提のみならず、当該期の外交構想全般の再検討の余地を残す。現状変更を企図するもその政策的志向は必ずしも一本化されず、条約破棄から条約の実質的修正を図るものまで様々であるが、対米関係と独自の東アジア秩序構築という無理難題を解決せんとする外務官僚の苦闘が見える2022/12/06