感想・レビュー
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夜間飛行
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ここには25才まで牧水の生きてきた経験が畳み込れている。《わがこころ海に吸はれぬ海すひぬそのたたかひに瞳(め)は燃ゆるかな》《こころまよふ照る日の海へ中ぞらへうれひねむれる君が乳の辺へ》《めをとぢつ君樹によりて海を聴くその遠き音になにのひそむや》…他の表現では置き換えられぬ恋の恍惚と不安。彼の歌は自分を突き放さずに置かない…《音もなうゆふべの海のをちかたの闇のなかゆく白き波見ゆ》《行き行きて飽きなば旅にしづやかにかへりみもなく死なむとぞおもふ》《きはみなき青わだなかにさまよへる海のひびきかわれは生くなり》2015/10/18