内容説明
シティポップが生まれた80年代。同時代の日本の「文学」は何をしていたのだろう?世界のファンのSNSが甦らせたポップ音楽の背後には、同じ時代状況から生まれ、同様に日本オリジナルの発展を遂げた、都会文学の世界が隠されていた。それは現実の都市生活をベースにしながらも、フィクションのヴェールを1枚かけて理想化された、作家たちの“夢”の中の「街」、「どこにもない」場所を架構する文学だった。本書に収めた“9つの物語”は「シティポップの時代」を並走した、そんな日本の忘れられた都会小説。そこには今も優しい風が吹いている。
著者等紹介
平中悠一[ヒラナカユウイチ]
パリ大学修士課程修了、東京大学大学院博士課程修了。1984年度文藝賞受賞。1965年生(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小太郎
36
「真夜中のドア」がリバイバルして当時の音楽が見直されている今ならタイムリーな企画なんだろうな、と思って読んでみました。Jポップ、ニューミュージック、そしてシティポップなんて言われているけどどう違うんだろうか?9編のアンソロジー作家は片岡義男、川西蘭、銀色夏生、沢野ひとし、平中悠一、原田宗典、山川健一。読んでみて片岡さんは別にして村上春樹さんの影響が大きいのかなと思ってしまうけど、最後のライナーノーツには一切書かれていないのは私の勘違いなんだろうか?こじゃれた都会小説は嫌いじゃありません(笑)★3.52024/08/13
ごーちゃん
27
シティポップと同時代の1980年代が舞台となったアンソロジー短篇集。参加した作家陣が意識して書いてるのか、この時代を書こうとすると意図せずそうなるのか、バブルの香りが強く、キザに見せたり、軽薄が美徳と勘違いした登場人物に辟易する。時代と言うよりシティポップを主題にしてるからだと思われる。そして私にはシティポップを物語、小説にするというのが合わなかった。無理矢理に褒めようとするのなら川西蘭著「秋の儀式」が短くて、あっさりしてて読みやすい。2024/07/07
turtle
10
『ニューヨーカー短篇集』をイメージして、80年代の日本の都会的な短篇を編纂したという本書。片岡義男、川西蘭といった、なるほど!という作家の作品もあれば、なんじゃこりゃ?と読むのを諦めた作品もありました。ちなみに後者は本書の編集をした平中悠一という方のもので、そうでなければこれらの作家陣と同じ本に収まることのない素人さんの殴り書きみたいな短篇でした。シティポップはやはり音楽を聴くに限ると納得。2024/07/05
jolly
5
2週間後に山下達郎を観に行く身としてはこれを読んどかないと借りてみた。懐かしの原田宗典以外は読んだことないかも。溢れ出る80年代感があるんだけど、これをうまく言語化できない。シンプルにあの頃よく読んでた景山民夫と似た雰囲気を感じるからなのか、なんなのか。ミニマリズムが選考の軸のひとつみたいに書いてあったけど、物理的に余白が多かった。これは最近あんまり見ないかも。もうちょっと追っかけてみようかな。 2024/07/10
ようよう
4
僕が子供の頃の小説だからか、少しその時代の気分を思い出す。憧れ、恥ずかしさ、カッコ良さはうつろうし、繰り返すものとも言えると。「あるいはね」という受け答えもネタにならない時もくるかしら?2024/11/03