内容説明
膨大な文業のなかに埋もれていた「社会派」短篇の名篇を発掘。高度成長期に隠された人間の悲哀を描く傑作選!野口冨士男の水上勉論「慕情と風土」を収録。
著者等紹介
水上勉[ミズカミツトム]
1919年、福井県生まれ。38年、立命館大学国文科中退。種々の職業を経た後、48年、処女作『フライパンの歌』を発表。松本清張の影響を受けて推理小説を書き始め、『霧と影』『海の牙』が直木賞候補となり、61年、『雁の寺』で直木賞を受賞。ほか主な作品に『五番町夕霧楼』『越前竹人形』『宇野浩二伝』『一休』『良寛』『寺泊』などがある。2004年、歿
大木志門[オオキシモン]
1974年、東京都生まれ。立教大学大学院文学研究科日本文学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、東海大学文学部日本文学科教授
掛野剛史[カケノタケシ]
1975年、東京都で生まれ、金沢市で育つ。東京都立大学大学院人文科学研究科国文学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、埼玉学園大学人間学部教授
高橋孝次[タカハシコウジ]
1978年、島根県生まれ。千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、帝京平成大学現代ライフ学部専任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ほう
26
9編からなる短編集。昭和の戦中戦後の混乱期の日本の中で、不審な死を遂げた人、事件性があったにも関わらずうやむやに葬られた人など弱者の視点に立って書かれたものが多い。日本の殆どの人が貧しかったが、その立場から見据えて書いた物語である。2022/03/29
ひねもすのたり
12
絶版で読むことが難しくなった九篇を収めた作品集。 水上勉は松本清張と双璧をなす社会派推理の書き手ですが、その魅力はひとえに貧乏臭さにあるような気がします。本書の序から引用するなら「地域や時代にがんじがらめにされた小さな存在」の主人公たち。読者は彼(女)たちの物語の背後に広がる昏い海と鉛色の空に想いを馳せます。 印象的だったのは『うつぼの筐船』このシチュエーションがたまりませんでした。 新刊コーナーにあった本書の上梓は昨年10月。今更誰が読むの?と思いつつ、版元田畑書店の心意気と良心を感じ取りました。★52022/01/03
Yumi Ozaki
2
貧しい中正直にまっすぐに生きようとする女性がつらい人生を送ることになる。悲しい話ばかりでした。 2023/01/21