内容説明
イギリスの隣に浮かぶこの小さい島国から生み出される芸術が、演劇や音楽、映画も含めて、世界の注目を集めるのはなぜだろうか。アイルランドの文学や音楽には、植民地支配の苦難の中で人々が表現してきた哀愁とぬくもりがある。極限状態でささやかな幸せを見つけずにはいられない人間の姿に共感し、弱者でありながら支配を拒む力強さと智恵に勇気づけられ、反主流であるがゆえの自由な発想に学ぶことが大きいのである。
目次
二つの系譜
ケルトの国
セント・パトリックス・デイ
キルコールマン城
ハープと吟唱詩人
諷刺の精神
独立運動と民謡
文芸復興運動
妖精と亡霊
言葉遣いのアイロニー
ステーション島巡礼
カトリシズムからの出発
エグザイル
暴力の記憶
都市の子どもたち
アイルランド語詩
著者等紹介
山田久美子[ヤマダクミコ]
1953年東京都生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。広島大学大学院文学研究科英語学英文学専攻博士後期課程中退。立教大学法学部教授。2000年度ハーバード大学客員研究員(フルブライト)。専門の英文学のほかに、曽祖父の日本画家、狩野友信に関連して日米文化交流史にも取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふたば
2
シンプルで簡素なのに味わいがあって、アイルランド文学の奥深さと、それに対する著者の愛情と洞察が伝わる。アイルランドの歴史をたどりながら、伝説や口承文芸、吟遊詩人たちの伝える歌、アイルランド文学に流れる血ともいうべき言葉遣いの妙やアイロニーに触れながら、カトリシズムを経過して、現代の作家たちの言葉に宿るアイルランドならではの力に言及する。演劇や音楽についてもしっかり触れられていて、「文学」の幅広さ、諸芸術との切っても切れない繋がりをカヴァーしているのも良かった。ジョイス、読もう。2014/12/11
tokis
2
装丁とタイトルから受けるダルいイメージに反し、簡潔な構成によりテンポ良く21世紀現在の文学状況まで見通せる良著。ジョイスやベケットといった巨人たちの流れから、今も新刊本が書店に並ぶような現役作家へと記述がつながっているのが良い。2010/03/14
マッツ
1
アイルランドの文学を中心に、演劇や音楽まで言及する文化史。アイルランドの文化はイギリスの圧政と独立運動、宗教の対立を背景に持つ。2009/10/24
にたす
0
量の割に細かく章立てされていて、巻末索引もあるため気になる部分だけでも読みやすいと思われる。ジョイスやイェイツは読んだことがある本からの引用のはずなのに覚えていなかった。違う訳なのかもしれない。和製ファンタジーにはよく出てくる職業「バード」だが、ハープはけっこう大きいのであんな風に持ち運ぶのは無理だろう、などとあまり関係のないことが気になっていた。2012/05/26
ローリングエルボー
0
良本。再読すべし。参考文献リストも役に立つ。2018/09/09