出版社内容情報
本書は、日本最古の私鉄・南海電気鉄道の歩みを、膨大な歴史的資料と緻密な地域考証で解き明かした「街並み・歴史ガイドブック」の決定版です。著者は長年南海沿線に居を構え、その空気感を肌で知る気鋭の著述家。単なる鉄道の解説に留まらず、鉄路が育んだ文化、娯楽、そして人々の暮らしの変遷を活写しています。
本書の最大の特徴は、大正から昭和初期にかけて発行された「名所案内」やパンフレット、鳥瞰図といった貴重な資料が贅沢に収録されている点です。
第1章では、当時のレトロな色彩感覚が光る吊り広告や、四季折々の観光案内を掲載。かつて南海が提供していた「温泉」「釣り」といったレジャーの姿を浮き彫りにします。また、ライバルであった阪和電鉄(現・JR阪和線)の資料も網羅されており、広域的な視点で沿線史を捉えることができます。
第2章以下の構成は駅順に沿って展開され、読者はさながら車窓を眺めるように読み進めることができます。第2章では、難波から大和川までの区間に焦点を当て、今宮戎や新世界、かつて存在した「博覧会門前駅」など、都市化のダイナミズムを追います。第3章では、かつて全国にその名を知られた浜寺公園や諏訪ノ森周辺を特集。吉田初三郎による鳥瞰図を交えながら、海浜別荘地としての格式高い歴史を紐解きます。第4章以降は、岸和田の祭礼文化から、淡輪・みさき公園といった観光拠点、そして終着・和歌山市駅に至るまでを網羅。各支線(高師浜線、多奈川線、加太線など)の個性豊かな歴史も余すところなく紹介されています。
「由良要塞司令部」や「寺田財閥」といった歴史ファン垂涎のコラムも充実しており、地理的背景や政治・経済の側面からも南海電鉄を多角的に分析。開業当初から現在に至るまでの変遷が手に取るようにわかります。
本書は、資料的価値の高さはもちろん、著者の温かな眼差しが貫かれた「沿線へのラブレター」でもあります。鉄道ファン、歴史愛好家、そして大阪・和歌山にゆかりのあるすべての人に捧げる、ノスタルジーと発見に満ちた一冊です。
【目次】
索引地図 4
第1章 扉 地図やパンフレットでふりかえる南海 5
1926(大正15)年発行 「南海名所案内」 6
1929(昭和4)年発行 「南海名所」 10
1936(昭和11)年発行 「南海沿線案内」 13
1937(昭和12)年発行 「沿線案内」 14
南海線吊り広告各種 16
南海沿線の春 18
南海沿線の夏 20
南海沿線の秋 22
南海沿線の冬 24
南海沿線の温泉 26
南海沿線の釣り 28
阪和電鉄(現・JR阪和線)鳥瞰図 30
南紀関連パンフレット 34
南海鉄道開通50年記念絵葉書 38
コラム 由良要塞司令部とは 40
第2章 難波から大和川まで -創業時の開通区間 41
難波 42
コラム 1932(昭和7)年陸軍大演習 46
今宮戎、新今宮、萩ノ茶屋 48
第5回内国勧業博覧会、新世界、ルナパーク 50
博覧会門前(廃止駅) 51
天下茶屋、岸里玉出 54
1932(昭和7)年の陸軍特別大演習 58
粉浜、住吉大社、住ノ江 60
新阪堺電車 64
コラム 阪和電鉄 66
第3章 堺から忠岡まで -全国に知られた海浜リゾート- 67
吉田初三郎「堺市鳥瞰図」 68
七道、堺 74
大浜の栄枯盛衰 78
湊、石津川 84
南海沿線の住宅開発 86
諏訪ノ森 90
浜寺公園 92
浜寺公園の歴史 94
羽衣 98
高石 100
北助松、松ノ浜 102
遠州園と助松学園 104
泉大津 110
忠岡 112
コラム 南海鉄道と寺田財閥 114
第4章 春木から和歌山市まで -紀州街道に沿って-
春木、和泉大宮 116
岸和田 118
蛸地蔵 120
貝塚 122
水間鉄道 124
二色浜 126
鶴原、井原里 128
泉佐野 130
羽倉崎 132
吉見ノ里 134
岡田浦、樽井 136
尾崎 138
砂川奇勝 140
鳥取ノ荘、箱作 142
霊験温泉と小川温泉 144
淡輪、みさき公園146
淡輪遊園 148
孝子、和歌山大学前 152
紀ノ川 154
和歌山市 156
和歌山軌道線 158
コラム 泉州の祭り 160
第5章 南海本線系統の各支線 -個性あふれる5路線 161-
高師浜線 162
コラム 農業博物館 166
空港線 168
多奈川線 170
加太電車沿線御案内(鳥瞰図) 172
加太線 176
和歌山港線 18



