出版社内容情報
近畿、中京地区で広範囲に亘り鉄道網を展開する近畿日本鉄道。その歴史は明治時代の末期に設立された大阪電気軌道に端を発し、同社を中心とした地域鉄道会社との合併で綴られてきた。また各路線の開業延伸時等には地域の状況に寄り添い、時代を先取りした安全で利用者が快適に乗車できる車両を次々と投入していった。
昭和30年代は黎明期から時の最新技術を盛り込んだ新鋭車両までを、現役の車両として同時に本線上で眺めることができる、愛好家にとって至福のひとときであった。名阪特急に充当された10100系「ビスタカー」と戦前派の元特急用車両2200系が並ぶ様子を、大阪線の起点上本町駅で日常的に見ることができた。さらに軽便鉄道の施設で存続していた地方支線等では、当時としても古典の範疇に入れられそうな、創業期の車両が定期運用に就いていた。
関東在住の著者は職務の合間を縫って近鉄沿線を訪れ、主要路線が変貌していく様子や新旧車両を撮影された。ある年には元旦から線路際へ出向かれた。寒気の中で撮影を続けた姿からは、鉄道に対する熱い想いを窺うことができる。また1964(昭和39)年に廃止された三重電気鉄道松阪線を廃止前日に訪れ、駅や沿線の様子を克明にフィルムへ焼き付けている。そこに写っているのは廃止を目前に控えているにも関わらず、普段と変わらぬ姿で仕業に就く電車の姿だ。昨今のように路線の廃止、車両の引退を華美なお祭り騒ぎにしていないところには、消えゆくものよりも次の新しい世界へ目を向けようとする高度経済成長期下の時代性を感じ取ることができる。同年には東海道新幹線が開業し、日本の鉄道時間地図は都市圏へ向かって急速に集束し始めていた時代であった。
目次
1章 カラー写真でよみがえる近畿日本鉄道(戦前の近畿日本鉄道の時刻表;1964年当時の近畿日本鉄道、三重交通の時刻表)
2章 モノクロ写真でよみがえる近畿日本鉄道(大阪線;山田線;名古屋線;奈良線;生駒線 ほか)
著者等紹介
西原博[ニシハラヒロシ]
1939(昭和14)年、神奈川県横須賀生まれ。1962(昭和37)年3月、法政大学工学部機械工学科卒業。同年東急車輌製造株式会社入社、主に特装自動車部門を歩み、1999(平成11)年に定年退職。高校生の頃から鉄道写真を撮影し、鉄道趣味誌等に投稿。撮影対象は北海道から九州各県の国鉄・私鉄・路面電車等に及ぶ
牧野和人[マキノカズト]
1962(昭和37)年、三重県生まれ。写真家。京都工芸繊維大学卒業。幼少期より鉄道の撮影に親しむ。2001(平成13)年より生業として写真撮影、執筆業に取り組み、撮影会講師等を務める。全国各地へ出向いて撮影し、時刻表・旅行誌・趣味誌等に作品を多数発表。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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