出版社内容情報
2016年アカデミー賞2部門(作品賞、脚本賞)受賞、4月15日全国公開「スポットライト 世紀のスクープ」原作。
内容説明
2002年1月、アメリカ東部の新聞『ボストン・グローブ』の一面に全米を震撼させる記事が掲載された。地元ボストンの数十人もの神父による児童への性的虐待を、カトリック教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダル。1,000人以上が被害を受けたとされるその許されざる罪は、なぜ長年にわたって黙殺されてきたのか…。2003年ピューリッツァー賞(公益部門)受賞!
目次
第1章 ゲーガン神父の笑顔の裏側
第2章 隠蔽の循環構造
第3章 国中にはびこる虐待者たち
第4章 罪悪感に苛まれる被害者たち
第5章 全世界に波及するボストン・スキャンダル
第6章 失墜―教会に背を向ける人々
第7章 法律を超越した枢機卿
第8章 セックスと嘘と教会
第9章 変革の苦しみ
著者等紹介
有澤真庭[アリサワマニワ]
千葉県出身。アニメーター、編集者等を経て、現在は翻訳家・日本語教師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
それいゆ
67
カトリック司祭による性的虐待を描いた映画は何度も観てきましたが、すべて、一人の異常な聖職者を取り上げた作品でした。この報告書は、常軌を逸するレベルです。数十人規模の司祭の不祥事がカトリック教会を危機に陥れたのか?と予測していたのですが、途中で3桁の数字となり、さらに読み進めると、4桁の数字が目に入ってきました。信じられないというか、あぜんとしました。私は、独身の男しか司祭になれない制度そのものが元凶だと思っていますが、カトリック教会は絶対にそんなこと認められないのでしょう。新たな宗教改革が必要でしょう。2016/05/09
oldman獺祭魚翁
37
図書館本。 アカデミーの作品賞と脚本賞を取った映画と対となるノンフィクション。一人の神父による性的児童虐待から始まり、やがて全米を揺るがすカトリックのスキャンダルとなり、最終的にボストン司教区の枢機卿が、その失態(虐待司祭を他の教区に移す事で自体を隠蔽してきた)によって辞任するまでを追いかけている。正直キリスト教の主な宗派やその違いを少し知っていても、基本的に無神論である僕には、その心情的な面を理解する事は難しい(これは殆どの日本人に言える事だと思う)…続く2016/06/11
たまきら
34
カソリック教徒が多いボストンの地方紙が、複数神父による児童性虐待を教会が組織的に隠ぺいしていたとスクープする…この本は映画上映後にまとめられているため、枢機卿になったロウらのその後がわかる。また、より詳しく経緯が説明されているため映画では(散漫になるのを防ぐためであろうが)割愛されていた情報にふれることができる。その多くには胸が悪くなる。どこの長く続く団体の隠ぺい体質と大した差はないかもしれない。でも、信徒の純真を踏みにじるという意味で、企業や政治家の背信よりも質が悪い。ぜひ多くの人に読んでほしい一冊。2021/12/19
zero1
23
子が大切なら、カトリック教会に近づけてはいけない!教会での神父による性的虐待事件をボストン・グローブ紙が追う!ゲーガン神父は130人もの児童に性的虐待をしていた。しかも上司の枢機卿はこの件を隠ぺい。同様の事件は各国で起きている。日本でも起きた。さらに08年には米ペンシルバニアで過去70年で300人の神父が1000人以上の児童に虐待していたことが分かった。こうなると性的虐待はカトリックの伝統だ。再発防止には神父の結婚を認めるしかない。ボストンの件は映画になっており、16年のアカデミー作品賞に選ばれている。2018/11/13
チェアー
23
映画から想像して、もっと記者たちの活躍が描かれているのかと思いきや、事実の羅列に近くて、少し期待はずれ。翻訳の問題?しかし、綿密に関係者の証言を集め、細かく検証するという手法には感服。この例を見ると、まだ日本の調査報道は甘いのかなと思う。問題の根は深い。カトリックの独身主義、男性主義が時代にそぐわなくなっているのか。米国での司祭や司教の地位の高さも日本人には見えにくい点で参考になった。2016/09/11