内容説明
日常の歪みと暗黒の隙間から覗く誰ともわからぬ視線の先、そして大きく聞けられた口からとめどなく響くのは呪いか嘆きか…。我妻俊樹が放つ、奇妙でよじれた怪異の断片をまとめた実話怪談集。64篇収録。妬みと怨みが文字に織り込まれ、呪いの言霊となってあなたを襲う!
著者等紹介
我妻俊樹[アガツマトシキ]
歌人。怪談作家。2005年、第三回ビーケーワン怪談大賞で大賞受賞。短歌や創作怪談というジャンルで日常と非日常のあわいにある恐怖を作品化する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
154
けったいな訳のわからない話を書かせたら日本一と思う実話怪談の天才・我妻俊樹さんの本を読むと期待が膨らんでワクワクしますよね。全部で64話も詰まって何て贅沢な!と思いますし、もうベストを選ぶのは無理な話で人それぞれの好みの問題ですが、とにかく思いっ切り奇妙奇天烈な話を見繕って紹介しますね。『銀色おばさん』由美子さんの住む町に全身銀色で服だけでなく肌、歯、舌、目玉も白目も黒目もない銀色おばさんが出没していた。彼女は深夜限定で現れ、中学校の校庭で目撃されて丸でレコード針の様にぐるぐる自転してやがて消えるという。2020/12/31
HANA
55
実話怪談集。日常の中にポンと浮かび上がる不可解な出来事を綴ったような話ばかり。決して怖いというのではないけれども、読んでいると異界を覗き込むようなそんな気分に襲われる。淡々とした独特な文体が、それにさらに輪を掛ける。というかこの文体無しだとこの話達成立しないんじゃなかろうか。後半になるほど内容はますます奇妙になり「山間の町」や「歯医者へ」でそれは頂点に達している気がする。「山羊に見られて」とかは、百鬼園先生の『東京日記』連想させられる出来だし。わけがわからないけど引き込まれずにはいられない一冊だった。2015/09/03
澤水月
31
全編うっとり! 現世に百閒蘇り新作発表し続けている如し、冥途も東京日記も含みつつ現代的風味やおかしみも。G怪談は世に多いが本当に未経験次元に連れてかれる「シンク下」!(感動のあまり何人かに送った。生理的嫌悪感でなく平井堅PVのように悪夢的だが蠱惑する系!)「犬だから」もいいし「山間の町」はエダジマさんて題の方がいいかな?て気がするけど。銘菓のつぶやき、山羊に見られて、釜飯、漫画を捨てる…題と共に忘れないだろう。今巻特にトーン揃ってて押さえるべき一冊だが試し読みを勧める、好悪はハッキリするのが良書の証かと2015/09/02
ラルル
27
例えるなら普通の怪談が「テーブルの上の十円玉が勝手に動いた」とか「手が出て来て10円玉を掴んで消えた」とかなのに対し、この方の怪談は「テーブルの10円玉が突然消えたかと思ったら財布の中から出てきた」みたいなちょっと訳がわからない、意味判らないような変な話の数々。凄く良いです。ゴキの話と「犬だから」が特に気に入りました。2015/09/29
辛口カレーうどん
11
このシリーズ面白い。心霊体験とかそういうものではなく、いつか見た夢のような話の歯切れの悪さ、辻褄の合わなさがリアル。昔は家の電話を使っていると、たまに混線して知らない人の会話が、遠くに聴こえる事があった。何を話しているかと好奇心に駈られる一方で、不気味さも感じる…あの感じがこの作品集にはある。 『おまわりさんだよ』『タスケテ』『歯医者へ』が怖い。2018/10/10