出版社内容情報
本アンソロジーのテーマは、文豪たちの「嘘」。題材は、小説ではありません。随筆や手紙、周囲の人々が書き留めた、文豪自身の嘘が題材です。
「死んでやる」と言い過ぎて記者にキレられた太宰治。親しい人に嘘のハガキでいたずらをする芥川龍之介。「彼の嘘を聞くと春風に吹かれるようだ」と評された歌人・石川啄木など。
どこか魅力的で憎めない嘘を通じて、文豪たちの意外な素顔に迫る一冊。
内容説明
先生!嘘は小説だけにしてください!
目次
1 強がり・見栄の嘘―太宰治の嘘
2 その場しのぎ・言い逃れの嘘―中原中也たちの嘘
3 いたずらの嘘―芥川龍之介たちの嘘
4 迷惑だけど憎めない嘘―石川啄木の嘘
5 居留守・面倒くさがりの嘘―永井荷風たちの嘘
6 喧嘩と嘘―坂口安吾たちの嘘
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
74
やはり名の知れた文豪たちがつく嘘は規格外だった。言い訳も笑えればそれでOKでしょ?と茶目っ気満載な文豪もいれば、大胆不敵、時にはふてぶてしく、時には同情を誘い、ありとあらゆる嘘をついて何とかこの場を切り抜けようとする必死な文豪もいた。後世に残るような素晴らしい著書を世に送り出す事が出来ても、人間的に立派とは言い難いような人たち。「嘘を吐く」という行為から不完全の人間の面白さを垣間見た一冊。どうしようもない、だけど許してしまう。そんな魅力満載な文豪の「嘘」を周囲の人や本人証言から状況と心境を紐解いていく。2023/05/18
れっつ
35
名だたる作家たちの嘘と言い訳、開き直りなどの証拠文が集められた1冊。然もありなんな作家もいるが、教科書の写真の姿からは嘘つきと凡そ想像できなかったのは石川啄木と中原中也。こと啄木に至っては、仕事をサボり、金を早々に使い込み、その度稚拙な嘘を繰り返していたらしい(笑)。そして一等面倒くさいのはやはり坂口安吾。引き合いに出してくる言葉や物言いが回りくどく、相手も自分も認めては批判して言い訳し、結局何が言いたかったのかよく分からない。でもこれこそが坂口安吾なのだと妙に納得はした(笑)。皆人間味のある作家たちだ。2023/05/07
いちろく
29
太宰治も、中原中也も、芥川龍之介も、石川啄木も、永井荷風も、坂口安吾もついていますね、嘘。それもかなりスケールの大きい。まさか当人たちも後世まで証拠と一緒に、ついた嘘が曝されるとは思っていなかったでしょう。一方で現代、SNSや投稿動画などで誰もが世界中から指摘されて炎上し曝される可能性がある時代。もちろん当人が悪いケースもあるが、嘘や間違いがWeb上やデータとして残り、今後の人生に取り返しのつかないケースも。そんなイメージをしながら終始怖かったのは、ここだけの話。2023/05/24
喜木海弐
1
文豪たちがついた嘘や嘘にまつわるエピソードをまとめた本。ためになったのは柳田國男さんの子供の嘘の下り、嘘とその類語の言葉の由来から嘘の使われ方、学問としての嘘までさまざまな嘘に関する民俗学的解釈が詰め込まれている。2023/07/14