内容説明
震災から一〇年―。東京電力によれば、二〇二一年一月二二日までで賠償金の請求は延べ二九五万件を超え、約九兆七〇〇〇億円が被害者に支払われた。この財源には、国民の税金や電気代が充てられている。本書では、福島原子力補償相談室で約三年間、賠償係として勤務した岩崎氏に取材を行い、世間から東京電力に厳しい眼差しが向けられる中で起こっていった杜撰な賠償金支払いの実態やそれに目を付けた詐欺師たちが賠償金詐欺に乗り出していく動きなどを詳細に記した。「正当」な賠償があった一方で、「黒い」賠償もあったのだ。
目次
プロローグ
第1章 疑惑の共犯
第2章 東電入社
第3章 賠償係
第4章 マネーゲーム
第5章 賠償詐欺捜査官
第6章 賠償金
第7章 裁判と述懐
エピローグ
著者等紹介
高木瑞穂[タカギミズホ]
ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しーふぉ
19
税金や電気代を原資に原発の被害者に賠償する制度に群がる人々。営業実績ないのに営業していたとするケースや営業利益を水増しして詐取するケースなど。スピーディーさを求めて請求したもの勝ちになりがちな制度に反社や反社もどきも利権に群がる。もちろん正当な請求がほとんどだろうけど、9兆円を超える賠償額が税金や電気代と考えると虚しくなる。2021/07/18
Yasutaka Nishimoto
2
福島第一原発事故による被害への賠償。その制度は当然あると思っていたが、中の人の実際の仕事が生々しい。スピードを求める上層部と、書類上揃っていないとすんなり通せない案件。その隙間に不正な申請が混ざり込んでいる。主人公は、詐欺グループの一人と知り合いだったために転落してしまうが、入社から20数年、結果的に原発事故に翻弄されてしまう部分に、憤りだったり、切なさだったりを感じざるを得なかった。2022/03/05