内容説明
シェイクスピアの没後しばらくして刊行され、その作品群を後世に継承する礎となった、通称「ファースト・フォリオ」。今や天文学的な金額で取り引きされるこの聖像的な書物は、なぜ、またいかにして成立したのか?17世紀ロンドンの印刷工程の紹介にはじまり、書物のディテールから見えてくる印刷所や植字工たちのありさま、製本工程で書籍中に置き忘れられた物品のあれこれ、さらには愛書家たちの攻防までをも追いかける、書物が主人公の異色ドキュメンタリー。
目次
出版業者、役者、そして計画
目の見えない印刷業者とその息子
フォリオの印刷工程はいかにして再現されたのか
一六二二年から一六二三年にかけてジャガードが印刷した本
事前広告
本のつくり
植字工と単語の綴り
B植字工の重要性
一〇代の年季者
ページの組まれた順序〔ほか〕
著者等紹介
ブレイニー,ピーター・W.M.[ブレイニー,ピーターW.M.] [Blayney,Peter W.M.]
1944年、英国に生まれる。初期近代のロンドンにおける書籍出版業研究の第一人者
五十嵐博久[イガラシヒロヒサ]
1972年、福島県に生まれる。東洋大学教授(専門は英文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
48
4百年前に出版された「ファースト・フォリオ」と呼ばれる初のシェイクスピア全集に関する話と聞いても、多くの人には意味不明だろう。しかしフォリオがなければ、我々は多くのシェイクスピア作品を知らぬままだった。さらにフォリオの印刷や活字、組版などを通じて17世紀はまだ英語のスペルが確定しておらず、日本語の当て字に近いやり方が行われていた事実はイギリス史的にも興味深い話だ。シェイクスピア研究の基礎となり、収集対象になるなど世界でも有名な本になっていく過程はそれ自体が歴史であり、劇聖の生涯に劣らぬロマンに満ちている。2021/07/18