内容説明
『自由学校』や『本日休診』で戦後日本の都会風俗を活写するとともに、『現代人』『勲章』『気違い部落』など、人間や時代の深層を軽妙かつ鋭利に、ときに悪辣なまでに風刺する悲喜劇的な作品群を世に問うた渋谷実。小津安二郎や木下惠介と並ぶ巨匠と見なされた映画監督であったが、その存在は今や忘却の淵に沈みつつある…混迷を深める現代、細緻な作品分析のもとに今こそ回帰する“忘れられた巨匠”の予言的映画美学。
目次
1(渋谷実の異常な女性映画―または彼は如何にして慣例に従うのを止めて『母と子』を撮ったか;『本日休診』における「現在」―渋谷実と風俗喜劇;ダークヒーローの誕生―骨稽きわまる人間悲喜劇としての『現代人』 ほか)
2(笠智衆と鳥籠―『酔っぱらい天国』を中心に;「渋ジイ」が描く女性の老い―『もず』の淡島千景を代表例に;渋谷実の音響空間―音の層、あるいは映画的語り手の声をめぐって ほか)
3(語らず/語りえずの渋谷実を語る―熊谷勲氏を囲んで 座談会 熊谷勲・紙屋牧子・坂尻昌平・鷲谷花;忘れられたなんて言わないで、悲しいから 有馬稲子インタビュー;意地悪じいさんに意地悪されたことなんてない 香川京子インタビュー ほか)