内容説明
小説の“文体”に着目。ある文体が国境や言語を越えて作用するときに、どのように模倣され、誤読され、変形されたのかを“言語”に密着し分析しながら、新しい文体の創出は個人的なものであるだけでなく、集団的な作用から生み出されることを明らかにした、画期的に文学論!
目次
第1章 ジョイス『ユリシーズ』の断片的形式と伊藤整、川端康成(『ユリシーズ』の「内的独白」とデュジャルダンの『月桂樹は切られた』;ユリシーズの内的独白 ほか)
第2章 中国における一九二〇年代から四〇年代にかけての「意識の流れ」(ジョイス、ウルフ、マンスフィールドの輸入状況;ヴァージニア・ウルフの文体 ほか)
第3章 新時期中国における「意識の流れ」と高行健の「言葉の流れ」(雑誌『外国文芸』と袁可嘉編『外国現代派作品選』;王蒙の「東方意識流」 ほか)
第4章 魔術的リアリズムの文体とその中国における変容(魔術的リアリズムとは何か;リアリズムからシュルレアリスム、魔術的リアリズムへ)
第5章 ブラックユーモア(ブラックユーモアとは何か;『キャッチ=22』の文体 ほか)
著者等紹介
橋本陽介[ハシモトヨウスケ]
1982年、埼玉県に生まれる。慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程単位取得。博士(文学)。専門は、中国語を中心とした文体論、比較詩学。現在、慶應義塾大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
eirianda
14
やはり私は「百年の孤独」が好きだ…と再認識できました。国境はあるようで越えられるが、言葉の壁はあるよな。誤読やむなし。2018/09/19
カイロス時間
10
20世紀に登場した3つの文学スタイルが、中国小説の文体にどんな影響を与えたのか調べていく本。共産党体制下で情報が制限されていたり、社会主義思想によって創作の幅が狭められてられいたりと、独自の事情がある中でも海外のスタイルはちゃんと越境し、中国の作家たちに影響を与えていた。一方で、作家はニュートラルにテクストに向き合えるわけではなく、批評家を含む受容の共同体の一人として影響を受ける。周りの読みと同調するがゆえに間違った解釈で受容することもあるけど、そういう誤読が新たな想像力を招く。単線的な越境はない。2021/09/05
ぎじぇるも
2
近い国なのにあまり邦訳も出ず日本人には馴染みが薄くなっている中国現代文学についてのある程度の流れがわかる。魔術的リアリズムに興味があるのでやはりその章が1番面白かった。チベットの文学についても記述がある。出版社には中国小説もっと翻訳してほしい。2021/11/06