内容説明
かつてフランスのリヨン郊外にあったスラム街“シャアバ”。幼少時にマグレブから移住してきた少年は、貧しい家庭から勉学によって立身出世し、大臣にまで登りつめ作家となった…。作家自身が体験した青春時代を描きだした代表作。
著者等紹介
ベガーグ,アズーズ[ベガーグ,アズーズ] [Begag,Azouz]
1957年、フランスのリヨンに生まれる。作家、社会学者。両親はアルジェリアからの移民。リヨン第二大学で経済学の博士号を取得し、フランス国立科学研究センターに所属するかたわら、リヨン中央学校で教鞭を取る。2005年から2007年まで、フランスの機会均等推進大臣を務める
下境真由美[シモサカイマユミ]
セルジー・ポントワーズ大学(フランス)にて博士号を取得(比較文学)。現在、オルレアン大学人文学部准教授。専攻は、フランス語圏マグレブ文学、ポストコロニアル文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
53
アルジェリアからの移民二世として育った作者の自伝的小説。フランスの大きな西洋社会のなかで「家族・コミュニティ」といったアラブ文化の膜に包まれて育った少年の成長が描かれる。少年の喜怒哀楽はとてもクリアに書かれていて、あまり踏み入っていないからこそ、当時の記憶をそのときのまま再現したかのようだった。サローヤンの『僕の名はアラム』、ターミルの『はりねずみ』、ブラワヨの『あたらしい名前』などを思い起こすコミカルな作品。簡潔な文章で時代や舞台の空気感が伝わるだけでなく、なんということのない日常がとても魅力的だった。2022/01/02
uniemo
16
フランスに生まれたアルジェリア移民二世の作者の自伝的小説なのでもちろん作品にはフランスとアラブの文化や宗教的な違いや移民の貧しい生活などが描かれています。けれど一番興味深いのは主人公の少年の成長していく姿でした。頭の良い少年が色々な環境から学んでいく姿が何か明るくて気持ちが良かった。「エル・アトラス」シリーズの中ではとても読みやすい作品でした。2022/02/13
法水
4
アルジェリア人移民二世としてリヨンで生まれた著者が1986年に発表した自伝的作品(主人公の名前もアズーズ・ベガーグそのまま)。シャアバというのは日本で言うところのスラムとのこと。市場での小遣い稼ぎ、学校での作文の授業やテストでの順位争い、アパートへの引っ越しなどが生き生きと描かれる。文盲の両親のもと、周りのフランス人生徒との人種や宗教、文化の違いなどを感じつつ成長していく主人公がアルジェリアからの引揚者であるルーボン先生と出会い、書くことに喜びを見出していくところがいい。続篇があるなら読んでみたい。2022/02/12
Maumim
1
アルジェリアからフランスに移民した2世の子が主人公。それは著者自身のことでもあるのだけど。 スラムでの暮らし、学校生活、思春期の男子の友人とのたわいないやり取り。エル・アトラスの他の作品もよんでみたい。2022/03/20