内容説明
愛する者を手に入れるため、悪魔と結んだ契約に苦しむ娘と愛された男の苦闘を描いた「舌の先まで出かかった名前」、母親に殺されかけ生き延びた子どもが自らの生を謎掛けにすることで一つの王国を手にする「謎」ほか四編!伝承をもとに書きおこされた物語。それに魅了され、蒐集家を自認する作家の核となる文学観が表れた物語集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
50
謎めいた水際の少女、この世ならぬ何かと取引した女、禁じられた本を読んだ少年……。伝承や民話から範を取った物語を収録した一冊。冒頭の三篇こそ物語そのままであるが、後半になるとそれを含む異伝や解説等もその範疇に孕んだメタな造りの話となっている。後書きでは発表時期や媒体の違いもよるらしいけど、「時の勝利」程になるとそれが散文詩の様相も呈してきて物語自体とは別の詩情も感じられる程。それらが混然一体となった「死色の顔をした子ども」や寓話「エテルリュード~」とか、収録作諸篇物語の面白さというものを考えれるように思う。2017/06/19
erierif
15
最後の『謎』が特に良かった。『謎』というある物語(=コント)の原型が書かれたのち(この物語のバージョンはギリシャだけで46種類存在する。)キニャールの手法について書かれ、キニャール本人の物語、精神分析や物語ることについての素描、日本人にとっての漢詩と様々に展開する。非常に面白かった。"感情のただなかではー母胎の内部でのようにー「わたし」は存在しない。光の中に現れ出でたのちに、ひとつの「わたし」にたどり着くことのできる者もいる" "謎、すなわち自分である(ここでいう「自分」とは、子宮の皮膜とともに母親の(続2018/02/01
ぽち
10
民間伝承、口承文学を起源とする文芸の一ジャンル、物語り<コント>集。キニャールは装飾を極限にまで削ぎ落とした簡潔な文体で<コント>を刷新する、いや―<コント>は本質的に起源についての問いかけ―なのだから、刷新などされうるものではなくて掘り起こされるというべきか、地中に埋まっている遺跡を採掘して古代の姿のまま現出させる、というべきか、「むかしむかし、あるところに……」という、いつ、どこで、だれが、という固有性を排除した始原の力のそのものだ。2017/11/15
メルキド出版
8
「失われた声」(5・14 読了) 「謎」(5・31 読了)2018/05/14
sk
4
民話風の短編集。それぞれに謎を含んだ寓話となっている。2019/12/21
-
- 和書
- 新・企業集団物語