内容説明
死に直面した作家が、そこで死ぬため、書き始めた“最後の王国”。群れず、そして服従せず、二十一世紀をありのままに語る、隠者の書。影/死者たちとともに、文学を渉猟し、断片化し、ショートさせる、書物の脱構築!死者たちをめぐる変奏曲。小説の体をなしていないにもかかわらず、ゴンクール賞を受賞し、文学作品の定義/既成概念を打ち破った、異形の書。
目次
(ドイツ人の女)
(性的快楽の影)
(第三者)
(バーミヤンの仏陀)
ノルトシュトラント
(われわれ)
乳飲み児
(最後の王国)
壷
(不在の女)〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぽち
14
「いにしえの光」の感想でも書いてたけど、これを思想書とすれば暗喩の非常に多い散文詩的な文章は理解をすることが非常に困難で「難解」ということになってしまう。なのだけど本書解説でも言及されているとおりゴンクール賞も受賞した本作を「文学作品の定義をゆるがしかねない作品」なのだとすれば、ある種の読者には哲学書、思想書とカテゴライズされるものよりも読める、いや「体験する」ことができうるものだと思う。と言いつつもなかなか一読して本書がどういう書物か説明するのにはわたしには難しいので、すこし解説から引用させていただこう2017/05/13
YO)))
13
『死の間際にローマ人最後の王が何を言おうとしたのかは、誰にも分からない。…死にながら、彼はこう尋ねたのである。「影たちはどこにいるのか」』 原子爆弾や収容所すら過去となった世紀から、振り返って影たちの領分に足を踏み入れる─歴史、死者、時間の水源、答えの堆積としての過去へ、更には言語に依って意味分節される以前の人類原初のイメージと恐れの領域へと…。私たちの世界は今もそれらへの接続と連関の中に正にあるのだというそのことが、幾多の断章─開かれた揺らぎ─を彷徨ううちに、幾つもの共鳴、不確かだが途切れることのない2020/04/07
きゅー
13
断片化された様々なテキストを一つにまとめようと企図する時、その結果として何を目論むだろうか。本来であれば、それはある世界を再現しようとする試みであろう。しかしその企図が、方法であることを止め、目的であったとしたら、纏められたテキストは対象とする世界と同じく混沌たらざるを得ない。キニャールはそのようなものを目指したのだろうか。48歳で死の淵をかいま見た彼は「同じ一冊の書物の中で、あらゆる形式を使おう」と考えた。そして十字軍、ローマ王、エルサレム、キリスト、日本神話など歴史的断片を中心にテキストを纏める。2018/03/20
pon
2
読むと仕事を辞めたくなる点、方丈記に匹敵する逸品でした。途中で気づいたけどタイトルがオースターっぽい。ゴンクール賞受賞作らしい。2017/11/29
yuri
1
「今日、創造者と呼ばれる人々は過大評価されている。作品は過小評価されている」という言葉をそのまままとめたような作品。パスカルキニャールのFacebookフィードのような。でも本の形をしたliberでなければ読めないということもないであろうとか書いてありそう。下手な小説を一週間読むよりこれを10分読む方がいい。素晴らしい作品でした。第二集はやく読みたい。2018/05/06