内容説明
友人の結婚式をきっかけに、故郷の町に帰ってきたクレール。思いがけず弟ポールと、海辺の小屋で暮らすこととなる…リュミエール兄弟が初めてカラー写真を作った洞窟のある町を舞台に繰り広げられる、老ピアノ教師、かつての恋人シモンらとの、親密で奇妙なつながり。キニャールが最も愛する、美しき光の物語。
著者等紹介
博多かおる[ハカタカオル]
1970年、東京に生まれる。東京大学卒業、同大学大学院およびパリ第七大学博士課程修了。博士(文学)。フランス、ローマンヴィル音楽院ピアノ科・室内楽科卒業、音楽研究国家資格(DEM)取得。現在、東京外国語大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
131
読むにつれ、読む速度が遅くなり、物語に浸っている時間を長くしたくなる、そんな作品。狂った老女は少女のように彷徨い、想った男を見続ける。誰かを愛したならちゃんと別れてあげなければいけない。恨みのない傷んだ心は、別れを告げた者をも傷付ける。シモンの妻は、最後まで勝ち誇っていて、周りの惨状に目を向けられず、弱い息子の手を引いて微笑んでいる気がする。ジャンとカレーブ爺さんの語る部分がなにより美しかった。こういう小説の訳は読みにくいことが多いのに、さらさらと主張がないのに存在する美しい旋律。訳者の経歴を見て頷く。2017/03/07
antoinette
20
「あの人の行くところへならどこへでも、わたしは行く。あの人の暮らすところならどこにでも、わたしは暮らす。あの人の死すところに、わたしは埋葬されたい。――『ルツ記』」――クレールとシモン。海辺と荒れ野。死によってようやく一つとなった二人の愛。「わたしはシモンなの!」という科白があってもおかしくないくらい、少し「嵐が丘」を彷彿と。それにはクレールのキャラクターの面倒くささ(一般的にはわりと「身勝手」な人)も大いに手伝っているのだが、彼女をめぐる様々な視点が交錯することで不思議と心地よく読んでいられる。(続く2017/09/17
ぽち
15
浅学で恥ずかしいのだけれど全く知らなかった作家の、刊行されはじめたばかりの「コレクション」。書店で、なんとなく出会い、ということを思って手にとる。語学の才に恵まれた姉と同性愛者である弟の人生を簡素で短い文章で紡ぐ。ことばの隙間から立ち上る詩情が素晴らしかった。こんなに簡単なことばの連なりから、どうしてこんなに芳醇なイメージが感得され得るのだろう。本文同様の簡素で美しい装丁のカバーを捲ると深い青の表紙。レ・ブルー。そういえばティエリ・アンリのプレーも美しくて大好きだったなあ。2017/01/30
みちくさ
6
素晴らしかった・・・フランスの海辺の景色、人物描写が溜息が出るほどに美しく、この世界観に浸りながらの読書はとても幸せな時間だった。簡素な文章から溢れる詩情。なぜ、こんなに美しい情景が描き出せるのだろう。2017/02/16
GO-FEET
3
★★★☆2017/02/27
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- 和書
- 箱庭図書館 集英社文庫