内容説明
世紀末のパリを舞台に俗悪ブルジョワの主人公モーリ・ド・ノワロフが繰り広げる、キッチュで奇矯な行動の数々。奇想天外にして荒唐無稽な想像世界が現出する。エログロ、近親相姦、フリークス、腐猫の宴、糞尿譚、罵詈雑言がいたるところ鏤められた露悪趣味の極北。知られざる傑作、珍書中の珍書を本邦初紹介。
著者等紹介
野呂康[ノロヤスシ]
1970年、東京都に生まれる。東京都立大学大学院人文科学研究科仏文学専攻博士課程単位取得退学。文学博士。現在、岡山大学言語教育センター准教授
安井亜希子[ヤスイアキコ]
1974年、新潟県に生まれる。東京都立大学大学院人文科学研究科仏文学専攻修士課程修了。フランス語産業翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
31
舞台は世紀末のパリ。主人公は俗で悪趣味なブルジョワ(ついでに健忘症)。この主人公と周囲の人々が繰り広げる事件や出来事の俗で猥雑でグロテスクで無邪気なこと。ご夫人が糞を「ひりだす」お話や義母や息子の金を使い込むのは序の口で、主人公(男)が子供に授乳したり、痰や吐しゃ物を食べたり、フリークの女性と交わってできたフリークの子供を見世物にしたりと、大変行き届いています。でも、この徹底した悪趣味な悪ふざけがどこまで行くのか、どこか楽しんで読んでいました。結末も期待を裏切らない最低さ(ほめ言葉)で大変満足です。 2016/10/31
きゅー
9
これほど愉快で、下品で、バカバカしくも、神聖な物語は珍しい。ある男が腐敗した猫の死体を嬉しそうに頬張る場面に始まり、人の脳味噌を食う、痰ツボを飲み干すというゲテモノ食いのオンパレード。さらには、四肢を切り刻んだり、赤子をめった切りにしたりとグロ方面への心配りも忘れられていない。要は、まっとうな文学読みが下劣だと思うことを端から端までやりのける潔さ。科学技術の発展と進歩を揶揄しながら、世紀末の淫靡と退廃に触れ、ついには人間の本源的な欲望へと、物語は時代から後ずさるように進んでいく。凄い一冊。2014/09/18
刳森伸一
6
世紀末のフランスを舞台とした、下品で猥雑でエログロでハチャメチャな小説。とにかく色々と物凄いのだが、吐きそうなほどグロテスクな食事風景が特に強烈である。読んで思ったことは、人間性という化粧を拭いとった後に残る反吐は、黒い暴力的な魂ではなく、滑稽な愛と愛の対象以外への圧倒的な無関心かもしれないということである。2015/08/12
紅独歩
3
「胸が悪くなるような」小説が読みたい人には、是非お薦めする。七つの大罪を数え上げるように、しかも思い切り下品に露悪的に描いた作品。「1891年、『マルドロールの歌』を刊行した出版社から出されたものの、版元社長が良俗紊乱の罪に問われることを予想し逃走、書店には並ばず、フランス国会図書館にも収蔵されていない」なんてちょっと出来過ぎの感があって、後世に書かれたものじゃないのかと勘ぐってしまう。(笑)時代を超えるパワーを持った怪作です。2014/08/24
龍國竣/リュウゴク
2
サッフォーとは猥褻な内容を含んだ本書を刊行する上での偽名である。この作者が誰だったのか論争も繰り広げられたという。原書の現存部数はわずか五部という十九世紀の奇書。冒頭の貴婦人同士の糞に関する書簡で度肝を抜かれる。「ヒトのなる木」の挿絵も一見の価値あり。2014/08/31
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