内容説明
一揆の思想と行動原理は、現代のソーシャル・ネットワークに通じている。新進気鋭の歴史学徒が、一揆の本質を解明し、混迷する現代社会を生き抜くための新しい「ソーシャル・ネットワーク」のあり方を考察する。
目次
第1部 一揆とは何か(百姓一揆は幕藩体制がお好き?;中世こそが一揆の黄金時代)
第2部 一揆の作法(一味同心―正義と平等;一揆のコミュニケーション;「一味神水」はパフォーマンス;起請文が意味するもの)
第3部 一揆の実像(「人のつながり」は一対一から;縁か無縁か―中世の「契約」)
「一揆の時代」ふたたび
著者等紹介
呉座勇一[ゴザユウイチ]
1980年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)学位取得。日本中世史専攻。現在、東京大学大学院人文社会系研究科研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おたま
50
これまで「一揆」というと、白土三平が『カムイ伝』等で描いたような、圧政に苦しむ農民が、権力者に対して蜂起をし、世の中を変えるいわゆる「世直し」のイメージが強かった。それを著者は覆す。これまでの、あまりにマルクス主義的な、唯物史観による階級闘争としての「一揆」観から、史料そのものの丁寧な読み返しによって、そうではないもっと穏健な体制内的な活動としての「一揆」を描きだす。どうもそれは「一味同心」という契約関係(あるいは「約束」ぐらいの関係)による、集団的な「交渉」ではなかったのか。そのように著者は述べる。2025/02/19
きいち
21
なんと二人でも一揆が成立するとは!◇こないだ読んだ勝俣鎮夫の岩波新書「一揆」でも日本に平等な人と人とのヨコのつながりの伝統があったことを教えられたが、この本はそれをさらに突き進め、神のもとでの非日常のつながりという性質より、俗っぽい「契約」としての性質に光をあてる。このつながりは日常のものだ、と。平和な時には連歌やってたり、戦争起こる前のリスクヘッジで敵方と秘密の同盟結んでたり・・だから現代なら、「デモ」よりもフェイスブック、と。うん、納得。◇それにしても中世の人たち、コミュニケーションが戦略的だよなあ。2014/01/16
たま
19
飯嶋和一さんの「出星前夜」を読み、飯嶋さんの歴史小説は全て一揆の物語だと改めて気づかされ、この本を読んでみた。マルクス主義史観の影響下の戦後の歴史研究では「前近代日本の固有の階級闘争」として一揆を捉える見方が一般的だったが、呉座さんはこの本でより視野を広げ、2人以上の人間が協働する際の同盟契約として、利益確保を目的とするが支配層を倒そうとするものではないとして一揆を論じる。平安時代から明治初期まで長いスパンでさまざまの一揆を扱い、日本における異議申し立て行動の原型を浮き彫りにしており、実に興味深い。2020/07/21
niwanoagata
18
非常に良かった。 呉座氏最初の単著で、本人はこの後あまりいいスタートでは無かった的なことを仰ってましたが、僕は最高のスタートだと思った これは呉座氏の他の本にも共通することだが、氏の本は「歴史から学ぶ」と言う事が良くわかる本で、社会的な内容も取り上げられている。その代わり右翼左翼の馬鹿どもによく批難されているが… もう一つの特徴はこれまでの研究史がまとめられていること。これも氏の言葉だが「他人の褌で相撲をとる」と感じる人もいるかもしれないが、研究史がまとまってあるのは非常に貴重だ。 以上呉座氏全著書の感想2020/04/11
非日常口
18
一揆のスタンダードは中世のものだ。竹槍など体制にケンカを売るようなイメージは明治に出来あがった。それだけ明治維新の変動は大きかったようだ。元々は非武装どころか、意思統一した仏僧や武士のチームなど農民以外にも適用されたようだ。連歌ですら一揆と本書は良い、現在SNSなどのコミュもその一種という。確かにスマホの排他的な状態はファッショ(きずな)に近い要素があるが、バーチャルとリアルの差は大きいだろう。また一方で起請文による神仏への恐怖による精神的な束縛と無縁/アジールの登場を示唆する記述は面白い。2014/10/21