内容説明
薬に頼らない方針を打ち出している稀少な大学病院精神科の教授が語る、うつ病人口増大の知られざる背景と、うつにならない方法、そしてうつを治すための生活習慣改善法。うつに関しては、巷間ささやかれている常識のなかに極論も混ざっている。抗うつ薬の効果、激励禁忌(「励ましてはいけない」)の神話、長期療養の問題などだ。それらのなかには、学界ですでに否定されたもの、時代的な使命を終えたもの、一部の患者にしか妥当しないものなどがある。著者はその点を明らかにし、こころの健康を保つために睡眠時間を確保することの重要性を説く。
目次
序章 「都市型うつ」は時代の病
第1章 「都市型うつ」の時代
第2章 睡眠不足が最大の要因
第3章 うつを予防する7つの方法
第4章 「薬の出し入れ」ではうつは治らない
第5章 患者よ、うつと闘え!
第6章 精神科医よ、薬に頼るな!
著者等紹介
井原裕[イハラヒロシ]
1962年鎌倉生まれ。獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授。東北大学(医)卒。自治医科大学大学院、ケンブリッジ大学大学院修了。順天堂大学准教授を経て、2008年から現職。日本の大学病院で唯一の「薬に頼らない精神科」を主宰。専門は、うつ病、発達障害、プラダー・ウィリー症候群等。精神科臨床一般のみならず、産業精神保健、刑事精神鑑定等にも対応(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ニッポニア
41
なかなかいいタイトルですよね。韻をふんで、一言で本の内容を示しています。しかし、新しい見解です。抗うつ剤はあまり役に立たない。運動し、よく眠ること。当たり前のことができなくなっているのがうつですから、それを取り戻す、ということでしょう。以下メモ。一週間単位で50時間の睡眠を確保する。都市型うつは心身の疲労、生活習慣の破綻から。70年代以降、就眠時刻だけが遅くなり、起床時刻は変化なし、つまり睡眠不足。飲んで寝るのは気絶と同じ。暗すぎる朝を迎え、明るすぎる夜を過ごす。良好な睡眠には適度な肉体疲労が必要。2022/10/22
たか
10
長い間、うつが治らず苦しんでいる人には、明るい兆しとなる本。今の精神医学は薬に頼りすぎて多剤処方となっている。薬を飲んでも体調が改善しないのであれば、減薬、断薬すべし。薬物療法だけでは治らない。この方の主張は薬に頼らず、睡眠、運動、日々の生活感習慣を正しく生活することが重要と主張。あと、鬱だから頑張れと言ってはいけないという考えは本人にとっては良くない。勇気づけは必要。また、鬱で長期会社を休むことも本人にとっては、マイナス。個人の実務能力が低下するので、できれば、通勤しながら治療することが最良。2016/07/23
たか
6
再読。 本来の脳の機能障害である『鬱病』とそれ以外の抑うつ、気分障害や落ち込みなどを何でも診断される『うつ病』を分けて言及している。また、この簡単に診断される『うつ病』に警鐘をなげかけている。 また、うつ患者への激励行動は、禁忌すべきではないことや、多剤治療を否定的に捉え、独自の考えを持っている。 うつが長期間治らず、苦しんで人には難局打開へのきっかけになるかもしれない。2016/10/04
九曜紋
5
本書が主張したいのは、安易に「うつ病」と診断し、患者を薬漬けにしてしまう日本の精神科医療の在り方と、睡眠もろくに取らずに働くことを求める日本社会への警鐘だろう。自分は「うつ病」であると訴える患者の多くは睡眠の絶対量が不足していることからくる心身の疲弊であり、睡眠を確保するための一時的措置として薬を処方することまでを全否定するものではない。ここを誤読すると、薬漬けされることへの懸念から専門医にかかることを躊躇し、さらに深刻な病状に陥ることになりかねない。衝撃的なタイトルだが、少々ミスリードの危険性を感じる。2016/08/31
ten ten
4
現代人はストレスが多くなっているが睡眠は足りていないのは事実だと思いました。スピード社会・情報化社会に人間の脳が適応していくためには、睡眠の質は必須であると感じました。また、ゆったりのんびり静かに過ごす時間を意識的に作るのは大事な事ですね。マイナスばかりのメディアの情報に惑わされず自分の軸を持つ強い精神力を持つ事ができれば薬などいらないでしょう。2022/11/24